小牧嬉歌「間違ってたらアレなんだけど……何回目、なの?」
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◆ty.IaxZULXr/
[saga]
2023/12/05(火) 19:55:02.81 ID:loDylRht0
8 #19
夏休みのとある日
手鞠沢高校 アカペラ部室
アイリ「じゃあ明日の本番に向けての意気込みを〜……」
ウタ「あっ」
アイリ「代表して〜……」
部長と目が合ってる。けど、指名されない気がする。
アイリ「ウタちゃん!と見せかけてムスブちゃんどうぞ!」
ムスブ「私?」
ウタ「ほっ……」
ウルル「うーたんの心臓は守られた」
ムスブ「えーと。そうだな……私が言いたいのは……」
ムスブちゃんは、本気でやりたいと言う。
ムスブ「本気でやりましょう」
上手く行かなかったときに。
本気じゃなかったって言い訳は、失礼な気がするから。
ウルル「……ぉぉぅ」
レイレイ「……」
ムスブ「ただの学校行事ですし、なにかのコンテストでもないし、勝敗がつくものでも点数がつくものでもないですけど」
あの音がする。
ムスブ「人前に立つ以上は、『ザザザ』。本気を出したと胸を張るのが」
ウタ「……自分と、自分の大切なものに対しての誠実さ」
ムスブ「最低限の誠実さだと思います。ウタ、何か言った?」
ウタ「ううん、なんにも」
私は知ってる。私は覚えてる。ムスブちゃんが何を言うかを。
ムスブ「どんなことだって、『ザザザ』、が必要だってわかってる?」
ムスブちゃんの、良いところを。
ムスブ「面白いですね。他の『ザザザ』、『ザザザ』、じゃないですか」
何度でもムスブちゃんは同じことを言うから。
何回でもこの時に。だから、忘れない。
どんなにテープが擦り切れても、聞こえてくる真っすぐで強い音色。
ウタ「わかった……」
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