110: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/08/17(木) 23:16:20.37 ID:vFcum6570
「やっぱ解るか」
「さっきの論戦、正直引き込まれちまいましたよ。
杉浦の“戦術”は、非の打ち所のない完璧な内容だ。自衛隊として持つべき矜持、ぶらしちゃいけねえ指針はしっかりと理解した上で、その中で“それでも捨てなければいけないもの”を見極めていた。
何人に恨まれようとも、何人に蔑まれようとも、大局を見据え大志を成さんとする覚悟が、その冷酷なまでに論理的な物言いの影に隠れていた。奴さんは間違いなく、“指揮官”として並外れた器を持つ」
「対して小練は……まぁ、言ってることは率直に感想を述べると青臭えことこの上ない。杉浦が指摘した通り、自衛隊の戦力で日本の周辺海域と沿岸部を完璧に守り通そうとするなんざ愚の骨頂にして無謀の極み。
“やってみなきゃわからない”なんて言葉は通じねえ、仮に実行しようとするなら“やる前から解らなかったか?”って胸ぐら掴まれる。そんぐらいの言い分だ。
だが、アイツはそれを本気で言っている。できるできないじゃない、“やる”という絶対の意思のもとに」
「まぁ、バカだからな」
「バカだからこそ、周囲を奴は否応なしに巻き込む。杉浦にしろ、本来なら小練の言い分なんざ鼻で笑って一蹴してよかった。だがバカがバカな論をバカみたいに真っ直ぐに語るもんだから、杉浦も同じ土俵で真剣に語りざるを得なかった。
これが正義だ悪だで語ってるなら逆に論外でしたが、奴は恐らく本質的に…………“自分がそうしたい”からああいった主張を繰り広げています」
「………もし仮にそうなら、俺が想定していた以上の大馬鹿野郎だな」
「ですが、大馬鹿野郎だからこそ奴は杉浦のような軍を“操る”才ではなく“率いる”才に秀でる。その背を見せ、その先頭に立ち突き進むことに適正がある。
近代戦だからこそ必要であり、近代戦故に得難い………“将”の才が小練詩音という男にはある」
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