93:名無しNIPPER[saga]
2023/08/21(月) 23:42:32.99 ID:8i2PVv8go
「私の叔父さんが近くの教会で神父さんをしてるんだけど、魔法使いで、研究者でもあるんだ。だから叔父さんに聞いたら色々教えてくれるよ!」
「よし…なら、行こう」
そうして二人は、自宅に居た椎名の母親を下手な言い訳で煙に巻きながら、教会へと向かった。
「──っていう事があったんだ」
「なるほど…」
神父は逞しい顎髭を撫でながら、不動の杖を観察する。
「恐らく、この杖はシェイプシフターの組織を利用したモノだな。この魔法生物は他の生き物の魔力を吸い取り、それを使って対象物の姿に形を変えるという生き物だ。今や世界に数体しか居ない貴重な生き物だと言うのに、嘆かわしい…」
「そうなんだ…」
「ああ。とにかく、シェイプシフターの組織を利用していることによって、この杖にもその特性が引き継がれているようだな。つまり、魔力を吸収し、その形状を自在に変えられる」
「…それは分かりましたけど、俺は魔法使いじゃありません。なのにどうして杖と魔法が使えたんですか?」
「ふむ…」
神父は杖から不動へと視線を移した。
「前提として、どんな生物にも魔力は宿っている。問題はそれを自らの力として利用できるかできないか、だ。そして君は当然、使えないはずの人間だ。そのうえ…魔力量もそう多くはない。だが…おそらく、いや、あるいは…」
神父は二人の存在を忘れたかのように数分の間呟くと、急に顔を上げた。
「これはあくまで推論だが、その杖が魔力を吸収し、それを君に与えているのだろう。詳しい解説は省くが、これは理論的にも証明可能で、魔力量の問題はひとまずは説明できる。だが、次は理論…では説明できない。つまり、何故魔法を使えないはずの君がそれを使えるのかということだ」
神父はグラスに入った水を飲み干してから話を続ける。
「シェイプシフターに話題は戻るが、彼らは非常に知性が高く、人とある一定の関係を築くことがある。時には知恵を授けたり、な。それと同様にその杖に利用されたシェイプシフターの組織と君との間に何らかの絆が出来ているのではないだろうか?」
「…ですが、俺には身に覚えがありません」
「まぁ、彼らの思考回路は人間とは異なるし、私達の物差しでは測れないということだろう。ランプに形を変えた、というのも、愛理沙を守りたいという君の意図を汲み取っての事だろう」
その言葉を聞いて、椎名があることに気づいた。
「もしかしたら、私の拘束が解けたのも、杖があの一瞬の間に刃物とかに形を変えて、助けてくれた、とか?」
「その可能性は大いにあるな。まあ、これで杖と君に関する謎についてある程度は説明できたのではないか?」
「だね!」
「…もう一つ聞いてもいいですか?」
「構わないとも」
「魔法、ですけど、俺ならどれくらい使えますか?」
そう話す不動は、どこか期待に満ちた眼差しをしている。というのも不動は魔法に憧れる子供心をまだ幾らか持ち合わせているからだ。
「そうだな、さっきも言ったが君の魔力量は少ないから、あまり大規模なことはできないだろう。使える魔法も基礎的なものがせいぜいだ」
その言葉を聞いて不動は僅かに肩を落とした。
「…だが、その杖を使い続けていくうちにシェイプシフターとの絆が深まり、できることが増える、という可能性は考えられる」
「本当ですか!?」
「あくまで可能性、だがな」
「良かったね!」
そう言いながら椎名は、目を輝かせる不動を微笑ましく見つめている。
「さて、他に何か聞きたいことはあるかな?」
↓3まで
聞きたいことをどうぞ。なければ無しで構いません。
今日はここまで。
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