89:名無しNIPPER[saga]
2023/08/21(月) 22:31:23.48 ID:8i2PVv8go
「奴を止めろ!」
不審者達の一人が大声で叫ぶのと同時に、不動を狙っている杖の先が様々な色で光りはじめる。
だが、それよりも先に不動が持つ杖から光が拡散し、部屋の中を包み込む。その光は彼自身の目をもくらませた。
次第に光が薄れていき、不動は急いで目を開ける。だが視界に飛び込んできた状況は先程と殆ど変わっていなかった。
「…ただの一般人のはずの君と杖が共鳴し始めるから、何事かと思えば、ただアタシ達の目を眩ませただけじゃん」
暮林は小馬鹿にするようにそう言うと、笑いながら不動の杖を指差す。彼が手に持っていたはずの杖がいつの間にかランプに変化している。
「そんな…!」
この危うい状況を脱することができなかったことに対し、不動はただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。だが、彼が気づいていない変化がもう一つだけあった。
殆どの者が気づかぬ間に、椎名は縄と猿轡から逃れていたのだ。言葉をつぶやくのと同時に、一本の杖が飛来するようにして彼女の手に収まる。
「くそっ、少女を──!」
不審者の一人が言い終える前に椎名の姿が消えたかと思うと、次の瞬間には不動の横に現れていた。
「不動くん!」
彼女はそう叫ぶと、不動に向かって手を差し伸べた。何がなんだか分からなかったが、本能的に不動は彼女の手を握る。
不審者達の杖から二人に向かって光弾やら炎やらが飛んでいくが、既の所で二人の姿は忽然と消え去った。
不動と椎名の二人は、気づいたときには椎名の自宅、その二階にある彼女の部屋の中に居た。激しく頭を揺さぶられたような感覚におそわれた不動は、そのまま意識を失った。
「…うん…ここは…?」
目を覚ますと同時に、不動は額に暖かい感覚を覚える。そしてすぐ目の前に椎名の顔が飛び込んできた。
「大丈夫!?」
膝枕をしながら、椎名は不動の顔を両手で包み込む。
「う、うん。…そうだ、あいつらは!?」
「それなら安心して…暫くは…大丈夫、だから」
そこで不動はようやく、椎名の顔色が少し悪いことに気がついた。
「椎名こそ大丈夫か!?」
「大丈夫だよ。…ただ、転移魔法はちょっと消費が…」
魔法。その言葉を聞いて、不動は再び今までの出来事を思い出す。
「………椎名、落ち着いてからでいい。ただ、どういうことかちゃんと説明してくれないか?」
「…うん」
そうして椎名からの話を聞くこと十数分、不動は多くのことを知った。それも俄かには信じがたい事柄を。
つまりは、この世には常人には知られざる魔法が存在しており、椎名は魔法使いの家系であること。そして彼女が所属していたNPOも魔法遣いにより組織されており、魔法生物の保護──少なくとも表向きは──を目的としていたことを。
「……今でも夢みたいだけど、本当なんだな」
杖を眺めながら不動が呟く。今まで椎名に秘密にされていたことや、本当に命が危うかったこと、世界の裏側をのぞきこんだこと、それらの全てが渾然一体となり不動の思考回路はぐちゃぐちゃに乱されている。
「ふぅ、とりあえず………分かった。でも、一つ気になるんだけど、椎名はどうやって拘束を?」
「あれ?不動くんがやったんじゃ…?光で見えなかったけど、あの時に突然自由になって…たぶん刃物か何かで切ってくれたんだと思うんだけど」
「…そもそも、俺は魔法使いじゃ無いだろ?何で杖が…」
その疑問に対し、椎名は納得のいく答えを思い浮かべられなかった。
「……不動くん。あの人たちの事もあるし、今後の為にも相談したい人が居るんだけど、いいかな?」
「もちろんいいけど…誰なんだ?」
「それは──」
↓1 相談相手とは?
個人でもいいですし、何らかの組織でも構いません。どちらにせよ簡単な絶命だけお願いします。
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