113:名無しNIPPER[saga]
2023/09/01(金) 23:06:58.47 ID:YWmeO82zo
「お二人共、お久しぶりです。元気にしてましたか?」
「はい!」
「…ええ」
「それは良かったです!僕もこのとおり元気ですよ」
二人の元を訪れたのは、彼らの証人保護プログラムの担当捜査官である高木巡だ。人に親しみを与える雰囲気を持つ人物で、不動と椎名も高木を信頼するようになっていた。
「今日は少し確かめたいことがあってきました。不動くん、ちょっと杖を出してくれますか?」
「…はい」
言われるがままに杖を取り出そうとしたその時、不動は異変に気づいた。自分の杖が微かに震えながら光を放っている。少し逡巡したものの杖を取り出して机の上に置く。
その様子を見て、高木はため息をつきながら同僚に命じて箱を持ってこさせた。白い、細長い箱だ。その箱が机に置かれると同時に杖はさらに光を増して震えも大きくなった。
「……はあ。では不動くん、少し外に出てきてください」
そうして不動は他の捜査官に案内されるがまま、家の外へと連れて行かれた。それと同時に杖の光は次第に薄れてゆき、振動もやがて止まった。
それを確認すると高木は不動を呼び戻した。不動が席につくと、今度は箱の蓋を開けて中からの一本の杖を取り出した。それを不動の杖に近づける。すると二本の杖が独りでに動き出し、やがて溶け合うようにして一つになった。
「……!?」
「ど、どういうことですか!?」
二人の反応を見ながら、高木は両手で頭を抱えて呟く。
「はぁ……。本当に予測通りになっちゃいましたか、嫌だったんですけどねぇ…。うちの研究班が優秀なのはいいですが、今ばかりは彼らのことを恨めしく思いますよ…」
ひとしきりブツブツ呟いたあと、高木は二人に向き直って口を開く。
「お二人にお伝えすることがあります。……もっとも、あまり歓迎できない話でしょうが」
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