34:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:29:10.17 ID:sZTlet6c0
王子『まっ、それもそうか。僕みたいな凡才が思いつくことは、この人みたいな天才にとって些細なものだろうし』
王子『……はぁー。天才の頭を覗いてみたいよ』
王子『そうしたら、きっと、今より魔法が上手くなれるんだろうなあ』
王子『…………』ハァー
王子『……よしっ。次はどの考察を読もうか――』
35:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:29:36.32 ID:sZTlet6c0
王子『おっ、王女か。びっくりしたぁ』
王女『びっくりしたぁ、じゃないよお兄ちゃんっ。今何時だと思ってるの?』
王子『え? んー、何時だろ。9時ぐらいか?』
王女『分かんない!』
王子『えー……』
36:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:30:11.02 ID:sZTlet6c0
王子『僕はいいや。母さんと父さんがいれば十分だろ』
王女『十分じゃないよーっ。王様に顔を見せないと!』
王子『顔を見せたところでなにするんだよ』
王女『……んー、お話とか?』
王子『王様に話すことなんかないだろ。僕たち子供が』ハァー
37:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:30:37.31 ID:sZTlet6c0
王女『そうかなー? 王様はいつもニコニコしながら聞いてくれるよ? 学校の話とか』
王子『あのなあ。魔王の子供だから優しくしてくれてるだけで、王様だって本当は子供の話なんかに時間を割きたくないっての』
王女『そうなの?』
王子『そうに決まってんだろ。大人は忙しいもんだ』
王女『でも、この前、帰る途中に魔王城の広場で街の子供たちと一緒にボール蹴ってたよ?』
38:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:31:32.33 ID:sZTlet6c0
王子『どうせ、昼の会食には参加しろって感じだろ? 心配すんな。その時には戻るから』
王女『……分かった』
王子『なら帰れ帰れ。僕は忙しいんだ』
王女『忙しい? ――あっ』
39:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:31:58.41 ID:sZTlet6c0
王女『その本、賢者の残した考察だ! 図書館から持ち出したらいけないなやつ!』
王子『……いいだろ、別に。こんな機会じゃなきゃ落ち着いて読めないんだから』ハァー
王女『危険なものもあるから子供だけで読んだらいけないんだよ?』
王子『大丈夫だよ。そんなの、大人のざれごとだ』
王女『ふーん……』ジー
40:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:32:26.68 ID:sZTlet6c0
王子『はぁ? 嫌だよ。僕が読んでるのに』
王女『口止め料』
王子『え?』
王女『わたしにも読ませてくれたら、お母さんとお父さんには本を持ち出したこと黙っておく』
王子『……勝手にしろ』ハァー
41:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:33:09.25 ID:sZTlet6c0
王女『んー。呪文の考察、マギカの正体について、魔法の原理とその可能性。どれにしようかなー』
王子『さっさと選べ』
王女『あっ、これ面白そうっ。この本に決めた!』
王子『読むときは静かにな』
王女『分かってる。えーっと、なになに? 莫大なマギカの衝突におけるワームホールの発生について』
42:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:34:54.56 ID:sZTlet6c0
王子『ああ。大人でも理解できる人がいなくて、理論すら賢者本人しか理解してないってレベル』
王女『へー』
王子『だからやめとけ。もっと易しいやつがあるから』
王女『いや、これにする。第一印象でピーンときたから』
王子『……そうかい。まっ、勝手にしろ』
43:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:35:23.02 ID:sZTlet6c0
王女『えーっと、なになに? はじめに、この本を読んでいる君に告ぐ』
王子『……声に出して読むな』
王女『この研究は人間と魔族両方の歴史を鑑みても存在しない、前例がない魔法へのアプローチである』
王子『……静かに』
王女『そのため、未知の領域が多い。非常に危険なものだと理解してほしい』
44:名無しNIPPER
2023/06/11(日) 01:35:50.37 ID:sZTlet6c0
2時間後――
王女『…………』
王子(王女のやつ、静かになったな)
王女『…………』
王子(もしかして眠ってる? いや、寝息は聞こえないか)
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