73:名無しNIPPER[saga]
2023/06/13(火) 15:43:19.79 ID:pMPOQ4q+0
神というよりも天使の姿では思った諸君は、神の額に目を向けて頂きたい。その額に光り輝く星形のほくろ、そしてそこから伸びる一筋の一本毛が、この膨れて羽の生えただけの赤ん坊が只者では無い事を思い知らしめてくれるであろう。何を隠そう愛らしくも少し間の抜けた御姿をもつこのお方こそが、我らが信仰する神その人なのである。
74:名無しNIPPER[saga]
2023/06/13(火) 15:43:50.73 ID:pMPOQ4q+0
「鶏の肉と、酒をもって神に感謝の意を捧げよ」
妻が、聖書から導き出した洗礼のやり方は意外なほど容易いものであった。準備を整えるのに、お金も時間もさしてかからないだろう。
75:名無しNIPPER[saga]
2023/06/13(火) 15:44:20.19 ID:pMPOQ4q+0
さて、僕が結婚僅かにしてケンタのバレルをビールで胃に流し込むに至った経緯はこれでお判りいただけたことだろう。今日、僕はようやく真にの火曜日「洗礼」を迎えることとなった。そもそもの話がだ、ソロモン・グランディになぞらえるべく、七五三を日本式の洗礼とすることに無理があった。無理やり当てはめたところで、それはただの自己満足であって本当の意味で尊敬するソロモン・グランディをなぞらえているとはとても言えない。
76:名無しNIPPER[saga]
2023/06/13(火) 15:44:51.29 ID:pMPOQ4q+0
であれば、この改めて「洗礼」を受けるに至ったことも、ある意味「神」からの恩恵であったのかもしれない。偽物の火曜日を、神がやり直させてくれたのだ。まあ、結婚の水曜日と、洗礼の火曜日がひっくり返ってしまったことに幾ばくかの気持ち悪さを感じるが、それも人生におけるご愛嬌というものであろう。それに、月単位で考えれば水曜日から6日待てば火曜日がやってくるのだから、何ら問題などないではないか。
77: ◆CItYBDS.l2[saga]
2023/06/14(水) 20:17:34.36 ID:O7ZfLRFN0
▼ 2035(令和17)年4月11日 水曜日 ▼
3度目の結婚をするに至りました。
78:名無しNIPPER[saga]
2023/06/14(水) 20:18:06.51 ID:O7ZfLRFN0
中には、僕のことを平凡な結婚生活を送ることすらできない甲斐性なしと罵る人もいるかもしれません。しかし、そんなことはないと僕は声を大にして言いたい。言い訳がましく聞こえるかもしれないが、確かに一度目の結婚は若気の至りといえなくもない。しかし、二度目の結婚、そして離婚に関しては僕にいっさいの責任がないと断言できる。
79:名無しNIPPER[saga]
2023/06/14(水) 20:18:46.63 ID:O7ZfLRFN0
というのも、二度目の離婚は結婚生活の失敗というよりは、お互いの幸せを願った結果にたどり着いた合理的な判断に基づくものだったからだ。あとは少しばかりの宗教的理由も含まれるけど、まあ聞いてくれ。
端的に言うと、妻が寝取られた。
80:名無しNIPPER[saga]
2023/06/14(水) 20:19:38.59 ID:O7ZfLRFN0
僕が、それをどうして「結婚生活の失敗」と認めないか説明するうえで、妻の浮気相手について少しばかり触れなくてはならないだろう。離婚時の約束で名前こそ明かせないが、彼は身長190cmを超え体重も90kg前後という絞られた肉体で、その巨体とは裏腹に世の多くの女性を魅了するベビーフェイス、決して驕ることのないストイックで誠実な精神を持ち、そして何より世界で最も優れた選手の集まるスポーツリーグで年俸500万ドルを稼ぎ出す超スーパースターだった。
81:名無しNIPPER[saga]
2023/06/14(水) 20:20:09.08 ID:O7ZfLRFN0
妻から浮気を告げられ、三人で話し合いたいと静かな料亭に呼び出された日には、如何に優しい僕といえ体中の血という血を滾らせていた。しかし、そこにスポーツ中継とニュースでしかお目にかかれない憧れの男が、心底面目無さそうな表情で現れたとなっては、不貞を働いた妻への怒りなどタンポポの種のごとく吹き飛ぶのも致し方ない。なんなら、彼のハートを射止めた我が妻を褒め称えんほどの心持ちだった。
82:名無しNIPPER[saga]
2023/06/14(水) 20:21:38.95 ID:O7ZfLRFN0
浮気相手が、超有名俳優であったらどうだっただろうか。僕は、怒りのあまりそいつを社会的に抹殺してやろうと合法非合法を問わず数多の復讐プランを謀るであろう。しかし、そうはならなかった。それは僕が、彼の熱狂的なファンであったからだ。彼のスポーツ界における成功は、単に身体的能力によって為されたわけでは無い。頑強な肉体に携えた、その高潔な精神性こそが何より彼が天より授かった才能なのだ。僕は、不信心ながら彼に信仰心すら抱いていた。そんな彼が、目の前で頭を床にこすりつけて妻との離婚を僕に乞いている。
83:名無しNIPPER[saga]
2023/06/14(水) 20:22:40.41 ID:O7ZfLRFN0
僕は、妻を彼に譲ってあげてもいいかなと。どこか、娘を嫁にやる父親のような気分になっていた。
しかし、僕とて僅かながらの男の矜持はある。いくら浮気相手が彼であったとしても、妻を寝取られたというのに快く離婚届にサインをすることなどできようがなかった。僕のサインを要求するなら、代わりにお前のサイン色紙もくださいと願い出ることも我慢したほどだ。そんな僕の躊躇を、妻は見て取ったのだろう。僕に、啓示ともとれる言葉を投げかけてきた。
「私に授けられたこの『恩恵』は、貴方にも起こりうることなのよ」
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