ソロモン・グランディに憧れて
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17:名無しNIPPER[saga]
2023/05/01(月) 14:00:47.06 ID:dOgL4Yt70

 もしかしたら、ソロモン・グランディにも同じようなことがあったのかもしれない。子供の誕生という、生涯の中でも数度しか体験しえない、そして大いに喜ばしい出来事が、歌の中に含まれていないのはやっぱり不自然だ。であれば、それは意図的に省かれているということになる。つまり、我が父と同様に、彼にとっても子供の誕生はやはり苦々しい思い出でであるのではなかろうか。

 うーん、そうすると。僕の敬愛するソロモン・グランディは、実は碌でもない男だったのかもしれない。


18: ◆CItYBDS.l2[saga]
2023/05/02(火) 08:19:43.56 ID:WEwQGqlq0
▲ 1999(平成11)年11月15日 火曜日 ▲

ソロモン・グランディは火曜日に洗礼を受けた。


19:名無しNIPPER[saga]
2023/05/02(火) 08:20:25.95 ID:WEwQGqlq0
 僕も詳しいわけでは無いが、洗礼というのは赤ん坊を水に浸すキリスト教の宗教的な儀式だったはずだ。この歌が出来たイギリスでは一般的なイベントなのかもしれないが、日本人の僕からすれば最も縁遠いものであろう。


20:名無しNIPPER[saga]
2023/05/02(火) 08:20:56.83 ID:WEwQGqlq0
 ちなみに、僕の家は浄土真宗の西本願寺だ。これは、妹の葬式の時に祖母が教えてくれた。と言っても、知っているのは「南無阿弥陀仏」ってフレーズぐらいで、とても仏教徒と名乗れるほどのものではない。そのことは、幼い僕たちが神社が運営する保育園に預けらていたことからも明らかだ。


21:名無しNIPPER[saga]
2023/05/02(火) 08:21:28.26 ID:WEwQGqlq0
 保育園では、正月にこそ保育園の裏にある神社(あるいは、神社の裏に保育園があると言った方が正確かもしれない。)に皆で参ったものだが。バレンタインデーにはチョコレートが振舞われ、夏にはお遊戯で盆踊りを舞い、クリスマスには父兄がサンタに扮して子供たちを楽しませた。あらゆる宗教的イベントをその場のノリで楽しむのは、宗教に寛容ないし無頓着な日本人故であろう。


22:名無しNIPPER[saga]
2023/05/02(火) 08:22:07.71 ID:WEwQGqlq0
 親戚が集まる宴席となれば、思い出話に花が咲くものだ。酔った母は、本棚から僕の写真が納められたアルバムを取り出してきた。開かれたページには、幼くあどけない僕が袴姿で映っていた。右手には千歳飴と書かれた縦長の紙袋が握られていて、その背後には見慣れた神社の拝殿が見える。写真の日付は、「1999.11.15」。僕の七五三の時の写真だ。


23:名無しNIPPER[saga]
2023/05/02(火) 08:22:39.16 ID:WEwQGqlq0
 スマホで当時のカレンダーを調べると、その日は火曜日だった。僕はしばし考え込む。七五三。伝統的な衣装をまとい、長寿を願う飴を食べ、神社に詣でるとなれば、それは宗教的儀式と言って差し支えはないはずだ。ならば僕は、ソロモン・グランディよろしく火曜日に日本的な洗礼を受けたということだ。


24:名無しNIPPER[saga]
2023/05/02(火) 08:23:30.25 ID:WEwQGqlq0
 僕は、満足げにうんうんと頷いた。僕とソロモン・グランディにおける人生の節目となる曜日の一致なんて、ただの偶然に過ぎないことはわかっている。それにしたって、一致してないよりはいい。だって、そのほうが今後に期待が持てるだろ。


25: ◆CItYBDS.l2[saga]
2023/05/03(水) 07:42:41.83 ID:JzIv0dpy0
◆ 2020(令和2)年6月17日 水曜日 ◆

 今日、僕は結婚する。


26:名無しNIPPER[saga]
2023/05/03(水) 07:43:11.93 ID:JzIv0dpy0
 妻との出会いは、僕が苦労して入った少しだけ偏差値の高い大学でのことだった。一つ学年が上だった妻とは、同じゼミに学び、研究テーマも似通っていたこともあり僕たちは時間を共にすることが多かった。良い年頃の男女だ、そういう仲になるのも自然なことだったと思う。


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