205: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2023/01/20(金) 02:46:45.67 ID:WJiIP5Z70
■Intermission🔔
ランジュ「…………」
──ただ……月を見ていた。
夜空がよく見えるこの場所で、ただ……月を見ていた。
思わず息を飲んでしまうような──大きくて丸く輝く、月を見ていた。
この景色が好きだった。
この月の先に──いると知っていたから。
ランジュ「……栞子……」
手を伸ばす。
でも……今、彼女は──そこにはいない。
ランジュ「…………お友達が……出来たんだものね」
私は伸ばした手を──ギュッと胸の前に引き寄せて……目を瞑った。
ランジュ「…………さようなら……栞子」
そう、言葉にしたとき──まるで、私の心を表すかのように、大きな満月に雲が薄く掛かって、ぼやけ始めた。
こんな月のことを……朧月と呼ぶらしい。
朧月の向こうで、いつも待ってくれていた栞子と──朧月の下でお別れする。
ランジュ「ふふ……皮肉ね」
私は朧月に背を向けて──この場を去る。
いや、去ろうとした……まさに、そのときだった。
「──ランジュ……!!」
名前を呼ばれた。
この、声は……。
振り返ると──そこには……朧月夜の下で──闇に溶けるような艶のある黒髪の女の子が……私を見ていた。
ランジュ「……栞子」
栞子「ランジュ……やっと、見つけましたよ」
──栞子が……そこに、立っていた。
………………
…………
……
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