661: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2023/01/08(日) 12:28:01.72 ID:5MWtUFJH0
■Chapter072 『ツナガル物語』 【SIDE Rina】
璃奈「──え、えっと……い、以上の観測結果から……この世界とは別のところに、高次元空間が存在してて……えっと……ポケモンの発生させるエネルギーによって、空間を歪曲させて……じ、実際にアクセス出来る可能性……」
──私は、スクリーンに映し出された研究発表のスライドと共に、自分の考えている理論を、手元のメモを見ながらたどたどしく読み上げる。
でも……そんな私──テンノウジ・璃奈の研究発表を聞いている人はほとんどいない。
先ほどまで、たくさん人がいたはずなのに……最後の順番である私のときには、室内に残っているのは2〜3人しかいなかった。
……いや、順番を最後に回した時点で……最初から誰も、私の話なんて聞く気がなかったんだと思う。
きっと、私が──研究所の創設者の娘だから……お情けで発表の場を作ってくれただけなんだと思う……。
璃奈「……い、以上で……は、発表……終わり……ます……」
私が発表を終えると、残って聞いていた数人の人たちも、部屋を退出していく。
私も足早に、この場を後にしようとした、そのとき──
──パチパチパチと、拍手が聞こえてきた。
璃奈「……?」
チラりと目をやると──金色の髪をした女の子がパチパチと拍手をしていた。
これが──私と愛さんの出会いだった。
📶 📶 📶
発表を終え、早く自分の研究室に戻ろうと、せかせかと通路を歩く。
道中、研究員の姿を何人か見かけたけど……みんな私の姿を見ると、目を逸らしてこそこそと離れていく。
そんな日常にも、もうとっくの昔に慣れてしまった。
でも、そんな中──
「──ねぇ〜! 君〜! 待って待って〜!」
璃奈「……?」
後ろから、大きな声で私を呼び止める人がいた。
愛「もう〜……さっさと退出しちゃうからびっくりしたよ〜!」
それは、さっきの金髪の女の子だった。
璃奈「えっと……」
愛「さっきの研究発表、すっごく面白かったよ!」
璃奈「ありがとう……ございます……」
お礼を言いながら、私は彼女を観察する。……歳は……十代前半かな。……でも、私よりは少し年上かも。
若い研究者はたくさんいるけど……その中でも一際若い気がする。
それに女性はちょっと珍しい……。
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