120: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 20:26:07.21 ID:hK/wqtGYO
鶴乃が目を覚ました時、丸二日が経っていた。
最初に視界に入ったのは真っ白な天井で、周囲を見渡すと誰もいなかった。
腕に違和感を感じて視線を向けてみると、点滴が腕に通されており、徐々に自分が病院にいることを認識した。
上半身を起こして改めて周囲を見渡すと、左手はカーテンが閉められた窓、正面は白い壁、右手は曲がり角。
病院の外側から見て、L字型の作りの個室にいるようだった。
121: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 20:26:41.10 ID:hK/wqtGYO
「もう知ってるんだね。お父さんと、みかづき荘のみんなはどうしてる?」
「鶴乃のお父さんは、出発前に様子を見に来たよ。鶴乃にはゆっくり体を休めておいてほしいって。
いろはお姉さまたちは昨日の午前中に来てた。状況については。わたくしから説明してあるけど、
鶴乃の現状は、みかづき荘のみんな以外には、伏せておくことにしようって。それでも、鶴乃と
同じ学校に通ってる魔法少女は他にもいるから、すぐに話は広がると思うけど……」
122: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 20:27:12.24 ID:hK/wqtGYO
訂正と追記は以上です。
123: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 21:06:48.00 ID:hK/wqtGYO
>>121からの続き
一方、さなは書置きを残して出た義実家に戻ってきていた。
心の中で過去のことになりかけていたはずの、忌まわしき思い出。
みかづき荘で生活するようになってから月日も経つ。
124: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 21:09:50.17 ID:hK/wqtGYO
そこへ、部屋に近づいてい来る足音があり、その後すぐに部屋のドアが開いた。
入ってきたのはあのころと変わらず実母で、ベッドに腰掛けるさなの姿に気付かず、
机の上に夕飯を置くと部屋を出ていった。未来へ渡る要員として選ばれたことへの
頭の混乱から、食事を摂らないまま出てきたため、食事に手を伸ばしそうになる。
125: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 21:15:42.34 ID:hK/wqtGYO
二人の会話を聞く限りでは、書置きを残して出てすぐは、さなの家出を信じていなかったらしい。
だが、食事がまったく減らない日が続くうちに、ようやく本当だと気づいたようだ。それから実母は
徐々に変調をきたしたらしい。
そこへ扉が開く音が聞こえ、そちらへ移動すると、実母がさなの元・自室だった部屋の扉を開いていた。
126: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 21:19:28.84 ID:hK/wqtGYO
「まるで、透明人間にでもなったみたいだね」
「そんな非科学的なことがあるわけないだろう。あんな出来損ないでも、一応の分は弁えていた。
家に帰る時間が遅かった分、顔を合わせる可能性が少なくて助かった。今思えば、さなが家に
居たときのほうが、まだ面倒が少なかったかもしれん」
「もしかして姉さんの学費、まだ払ってるの?」
127: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 21:30:23.16 ID:hK/wqtGYO
家にいると仮定されたさなへの、食事の用意は平日は夜のみだが、休日は朝、昼、夜の
三食を用意していた。だが、何れもさなの元・自室に食事を運んでは、下げる前に自分で
平らげて片付けていた。
義父は神浜大学の医学部の教授に就いているが、自尊心の高さが災いしたのか、
128: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 21:31:24.01 ID:hK/wqtGYO
家にいると仮定されたさなへの、食事の用意は平日は夜のみだが、休日は朝、昼、夜の
三食を用意していた。だが、何れもさなの元・自室に食事を運んでは、下げる前に自分で
平らげて片付けていた。
義父は神浜大学の医学部の教授に就いているが、自尊心の高さが災いしたのか、
129: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 21:34:38.76 ID:hK/wqtGYO
それからしばらくして、義兄が林間学校で神浜市を離れ、不在の日が数日続いた。
その頃になると、さなは違和感の正体に気付き、自分の中で答えを出した。
この一家は一見すると完璧だが、一皮剥けば欠点がいくらでも存在している。
義父の理想を沿っている間は安定しているが、少しでも逸れた途端不安定になり、
130: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 21:37:43.12 ID:hK/wqtGYO
自身の中で違和感への折り合いが付き、未来へ渡ることへ考えもまとまった。
灯花とねむへ求める対価も決まったことで、みかづき荘に帰ろうとしたとき、
それは突然起こった。
義兄が林間学校から帰る前日だったその日、地震が起きた。
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