119: ◆3U.uIqIZZE[sage]
2022/08/09(火) 20:24:21.27 ID:hK/wqtGYO
>>117を一部訂正、追記
「きっとただの思い過ごしだ」
「そうだよね……」
だが、それはすぐに裏切られることとなる。
その日の夜に入った一本の電話により状況は一変する。
連絡をしてきたのは外務省で、鶴乃の母と祖母が乗船していた船が、寄港していた港から
離れてすぐに強風に見舞われ、防波堤外で仮泊中に押し流される最中、エンジンに故障を
起こして沖合地点で座礁。船は横転し、現地では救助が行われていたが、引き上げられた
遺体の中から鶴乃の母と祖母が確認されたというものだった。また、遺体の引き取りには、
遺族が現地へ渡航して、手続きをする必要があるという。
「お母さん……おばあちゃん……」
「……こんなこと、まったく信じられない。信じられないが……」
「き、きっと、別の船が事故にあったんだよ。何かの間違いで……」
「船の名前を聞いた。認めたくないが、母さんたちが乗船していた船で間違いない」
「…………!!」
「今後、現地で事故調査が行われるらしいが、鶴乃。俺たちがこれからやることは、
まずは現地に母さんとおばあちゃんを迎えに行くことだ」
「じ、じゃあ……」
「急だが、とにかく動くしかない。鶴乃、すまないが今は部屋に戻っていてくれ」
鶴乃の父は部屋の箪笥の引き出しを手当たり次第に開け、パスポートを見つけると、
現地へ向かうために渡航の用意を始めた。
力ない足取りで自室に戻った直後、鶴乃の視界は暗転した。
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