97: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2022/11/16(水) 22:36:19.49 ID:W1WHWUQU0
密かに燻らせていた暗然たる思いがアトランタさんの言によって表出したのは、きっと綾波だけではなかったのでしょう。
この艦隊そのものを押し潰すかのように、重く苦しい空気が辺りを包み込みます。多摩さんも、文月ちゃんも、浜風さんも、私達の艦隊は誰もが暗い影を表情に宿して俯いてしまいました。
「全艦、傾注!!」
それを切り払ったのは、凛として放たれた扶桑さんの声でした。
「各艦隊旗艦は海図を同期、近隣海域で構築されている即席洋上補給拠点の最新情報を取得・共有するように!海図統合完了後、拠点規模に応じて一時艦隊を50km圏内で分散しつつ進軍します。
各空母・航空戦艦、他水偵装備の巡洋艦は偵察機を発艦。海図上の補給拠点が健在であることは事前に必ず確認してください!
拠点確保と補給完了後、指定座標にて再集結を。尚分散に際しては、最低でも一個小隊以上で行動するように。
集結後に後続敵艦隊を捕捉した場合、これを艦隊決戦の末粉砕致します!」
《“海軍”アナンバス鎮守府艦隊、了解!》
《スラバヤ泊地第2艦隊・旗艦高雄、命令を受諾しました!》
《ワイゲオ島泊地第1艦隊祥鳳、了解です!彩雲隊発艦、警戒を厳に!》
《国連“海軍”、マノクワリ鎮守府所属の長門だ。指示を確認、これより艦隊編成を行う》
「け、軽巡洋艦・多摩、命令を受諾したにゃ!」
「Air Craft Career-Hornet, Copy.
………さ、行くわよアトランタ」
「……………ハァ。Alright, Flag」
一連のやり取りを知らない、アトランタさんの言葉を耳にしていない両翼艦隊からは次々と意気軒昂な返答が届きます。また、何の脈絡もなく唐突に「本題」が再開されたことで、綾波達もまた否応なしに戦場へと引き戻されました。
(…………扶桑さんは、怖くはないのでしょうか)
急激で脈絡のない話題の転換は、何かしら長々と励ましや檄を飛ばすより余程迅速に綾波達の空気を切り替えてしまいました。その判断は、相変わらず的確そのものです。
ですが、彼女自身は何故あっさりと切り替えられたのでしょう。これほど聡明ならば、気づいているはずなのに。
私達は時間稼ぎのための“盾”に近い存在だと。この艦隊が、“玉砕”をある程度前提として編成されたものであると。アトランタさんに言われるまでもなく、扶桑さんなら理解できているはず。
にも関わらず、所作にも表情にも、動揺や恐怖は微塵も見られません。
【沈黙者】の忌み名を体現するかのように、彼女は黙して冷静な眼で水平線の彼方を見つめています。
その卓越した知略を以て策を既に練り上げ、“活路”を見出しているが故の冷静さなのか。
或いは知略に長じるからこそ既にこれを“死地”と悟り、その上で自らの使命に殉じる覚悟を定めたが故の諦観からくるものなのか。
(……………どうか。どうか、前者でありますように)
そんな、艦娘にあるまじき他力本願で身勝手な願いを胸の内で呟きつつ、他の皆さんに続いて私も機関を再始動させます。
ミ,,#゚ ゚彡《Spearチーム、全機続け!!》
《Rapter-01 for All unit, Follow me!!!》
夕闇に包まれつつある上空を、F-14JとF-22の編隊が凄まじい速度で飛び去っていきました。
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