37: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2022/07/22(金) 23:35:11.98 ID:2pXhSfOs0
銃剣を振り被った先には、重巡リ級の姿がある。驚愕で見開かれた眼が赤く輝いているのを見るに、Elite種であることが伺えた。
ただ、リスボンやベルリンの“アイツ”とは別の個体だ。仮にそうであるなら同じ状況でも寧ろ爛と笑みを浮かべて反撃の拳を振るってきただろうし、そもそもこんな状況に陥る前に………いや、これについては何ならわざとこうなるまで放置した上で逆境をたっぷりと堪能していたとしてもおかしくないな。
いずれにせよ、“アイツ”がこの場にいなくてよかった。そんな場違いな感想を妙に冷静に懐きつつ、俺はリ級の喉笛に深々と銃剣を突き立てる。
『ア゜ッ゜』
(#'A`)「Down!!」
間髪を入れず射撃。単射モードに切り替えていたG36Cから吐き出された5.56mm弾が、首をぶち抜いて後方へ飛び出す。顔面に渾身の右ストレートでも食らったような勢いで後方へ倒れ込んだリ級にもう一度引き金を引くと、急速に光を失っていく右眼を弾丸がえぐり取った。
船体殻が消えたなら、どうやら死んだ“ふり”ではないようだ。
_
(#゚∀゚)「伏せろ!!」
『………ッ、グゥ!!』
ジョルジュの叫びに応じて反射的に膝を折る。頭上をフルオートで放たれた火線が通り過ぎ、やや離れた位置にいたル級の船体殻の表面で弾けた。
『ジィアッ!!』
閃光弾の衝撃から立ち直りつつあったらしいソイツは、それを妨げる形で顔面付近に集中したジョルジュの射撃に対して苛立たしげな声を上げる。艤装を構えはするが、視界を弾幕で塞がれて照準は覚束ない。
その隙に、俺は屈んだ姿勢のままル級めがけて駆け出す。距離はせいぜい5メートル、若干の無理をすれば、ヤパーヌのニンジャのような人知を超えたスピードがなくとも1秒とかけず距離は詰められる。
『ッ!? ウォアッ!!』
('A`;)「Verdammt……!」
肉薄し突き出した銃剣はしかし、ル級が咄嗟に地面を滑らせて構えた艤装に阻まれ届かない。
これがル級の厄介なところだ。深海棲艦の中でも取り分け大きな艤装が遮蔽物となり、肉薄しての白兵戦に持ち込んでも刺突や斬撃を通しにくい。膂力がある分重量も苦にならず、こうして死角を突いても気づかれれば瞬く間に防がれる。
『キヒッ………!』
_
( ゚∀゚)「100ユーロ札でも拾ったか?クソアマ」
『────!!!?』
故にこそ、ル級相手の“白兵戦”は二人一組が基本となるわけだ。
_
(#゚∀゚)「うぉらぁっ!!」
『コピュッ………クォッ、コホッ………』
俺の“フェイント”を躱し、機銃でバラバラに引き裂いてやろうと勝ち誇った笑みを浮かべていたル級。だが反対側から肉薄してきたジョルジュが脇腹にナイフを突き立てると、途端にその表情は苦痛と驚愕、恐怖で彩られる。
そのまま2度、より深くねじ込まれるナイフ。ル級はその動きに合わせて同じ数だけ身体を痙攣させると、ブクブクと青い血を溢しながら前のめりに崩れ落ちた。
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