260: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/08/23(水) 23:18:45.55 ID:YMhrknSl0
グシャリ。
重く、鈍く、何かが潰れたような打撃音が響く。視線をやれば、丁度警棒を振り切った体勢の保安官と、その前で地面に勢いよく叩きつけられた【暴徒】1人が目に入る。
「クコッ…………』
斃れた【暴徒】の側頭部は、踏み潰されたアルミ缶のごとく歪に凹んでいた。
「っふ!!」
年齢的には初老に差し掛かっているその保安官は、年齢相応の“手練”らしい。返しの動きで更に2人の【暴徒】に向かって繰り出された打撃は、どちらに対しても無駄がなく正確だ。
『オグォッ……」
「いでっ、あぎっ!?』
片方の喉笛に、突きを。
もう片方の腹に膝を入れ、くの字に体が曲がったところで首筋に全力の打ち下ろしを。
実に迅速かつ的確に、彼の打撃は向かってきた【暴徒】達の“急所”を打ち据える。
「うぉりゃあ!!!」
『ガブッ!?」
「【ヌタウナギ】に気をつけろ、奴ら隙間から突然来るぞ!!」
「ぐぁっ!?』
「っ、どいてよ!!」
「『ウガッ……」』
いや、その保安官だけじゃない。より年季の入ったベテランから今年入ったばかりと思わしき若い隊員まで、男も、女も関係なく。
突入した機動隊の誰もが、容赦も加減もなく全力全速で【暴徒】達の急所目掛けて自らの得物を振るっている。
「面っ!!」
『ぎゃっ…」
そも、警棒を使っている人数自体全員ではない。
例えば、今しがた巨漢の【暴徒】を打ち倒した保安官が構えているのは、日本刀。商業区の土産屋が外国人観光客向けに取り扱ってもいたのだろうか、模造刀らしく逆刃にはなっているため“斬る”ことはできない。
けれど、しっかりと体系的に武道を学んだ人間が取り扱えば、鉄製であるそれは充分な殺傷力を伴う。現に振り下ろされた【暴徒】の頭は縦に深々と割られ、脳漿と血を撒き散らしながら崩れ落ちていく。
他にも、鉄パイプに釘を打ち付けたバット、角材にコンバットナイフ、ステンレス製の杖、どこで拾ってきたのやら青龍刀なんてものまで──無論これも模造刀だけど──見える。総じて、全体の3割程度が警棒以外のものを………より高い“殺傷力”が得られるものを装備し、戦闘に参加していた。
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