241: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/07/26(水) 21:22:44.85 ID:1kNqHEos0
……少しばかり“不愉快な記憶”のせいで熱くなってしまったけれど、ほぼ全ての試合が運や偶然に縋り頼った勝利であったこと自体はさっき述べた通り否定しない。
バタバタと慌ただしく、不格好でコミカルな、終わった後に「何で勝てたのか」と首を傾げてしまう、結果オーライを辞書で引いた時に例示の一つとして出てきてしまいそうな、そんな試合運びの数々。
直前まで黄金期を築いていたチームや、その黄金期を終わらせたチームのような“強者”の戦い方からは遥か遠くに位置するもの。
どこの野球チームの監督だったかしら、「勝ちに不思議の勝ちあり」なんて言ってたのは。まさにその体現と言っても良かったかもね。
だからこそ、私は惹かれた。
絹糸よりもか細く儚い【勝ち筋】を、どれほど不格好な有様を晒しながらも必死に手繰り寄せる泥臭さに。
戦車道に関する知識も戦車自体に関する知識もその大半が私に毛が生えた程度のメンツでありながら、最早バカが付くほど正直にまっすぐに同じような立ち位置のチームメイトを信頼して、平然と背中を預けてしまう無鉄砲さに。
そんなチームの先頭に立ち、誰よりも多くの信頼を集め、誰よりも深くチームメイトを信頼し、誰よりも力強く【勝ち筋】を手繰り寄せる“彼女”の────西住みほさんの姿に。
我ながら、“入り”は大分ミーハーな感情だったと思う。日頃サッカーの“サ”の字すらろくに口にしないのに、世界大会が始まるや否や渋谷の路上で騒ぎ立てる連中の気持ちを、あの時ほんの少しだけ理解した。
本来なら一週間すら保ったかどうか怪しい麻疹のような一過性の“熱”。それがより深く、強烈なモノに変化したのは……大洗女子学園と西住さんが、あの時何を背負っていたかを知ってから。
人の命よりも伝統と栄光を重んじ、友を救ったことを褒めず勝利を逃したことを面罵するような連中に“道”を閉ざされ。
傷を抱えた彼女が辿り着いた先で、今度は大人たちの一方的な事情で“家”が取り上げられそうになり。
一度守り抜いた筈の家を、再び開いた筈の“道”を、私利私欲に塗れた謀略で踏み躙られ。
それらを尚も跳ね除けて自分の居場所と信念を仲間と共に最後まで守り抜いたと知った時───私はどうしようもないほど西住みほという人間に憧れ、羨望した。
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