235: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/04/19(水) 01:10:51.87 ID:EeDdit1v0
風切り音が。
小銃弾や機銃弾よりは遥かに巨大な質量を持つ鉄の塊が。
一発の“砲弾”が、私の頭上数メートルの位置を駆け抜けた。
『グァアアッ!!?』
“それ”はそのまま雷巡チ級に直撃し、【船体殻】の表面で弾けて爆炎を撒き散らす。無論悶え苦しむようなダメージは与えようもないが、困惑と驚愕が入り混じったような声色で吠えつつチ級は姿勢を崩した。
「……………は!!!?」
∬;メ゚_ゝ゚)
└(メ;*゚ヮ゚*)┘
ただそれは、阿音も、鈴も、私だって同じ気持ちだ。私達三人も、【暴徒】も、【寄生体】も、この場の誰もが、自分達の時計を止められてしまったかのように身動きができなくなり、束の間“砲撃”が飛来した方角を───“大洗女子学園校舎”がある方へと視線を向けていた。
「Panzer vor!!」
まさにその方角から、微かに聞こえてきた“戦車前進”を示すドイツ語の叫び。その後を追うようにして、鉄の履帯がコンクリートを踏みしめる無骨で耳障りな音が響き、そしてそれはすぐに急速にこちらへと近づき始める。
「ぎゃあっ!??』
『ウゴァっ………」
『『ギョプッ』』
『ギッ…………グゥッ………!!!』
“群れ”の向こう側で、何かが蠢いている。それは【暴徒】を跳ね飛ばし【寄生体】を踏み潰し引き回し、さながら制御の利かない巨大な暴れ牛の如く私達の方へと向かってくる。チ級が“ソレ”に向かって機銃を向けようとしたが、飛来した二発目の砲弾の炸裂がその動きを阻害した。
∬;メ´_ゝ`)「01、後退して!!」
「っ………!!」
「『「うぐぁあっ!!?』」』
『『『ギギッ!!?』』』
不覚にも茫然自失状態になってしまっていた私は、阿音の声で我に返り咄嗟にバックステップする。直後相対していた“群れ”の前衛が一瞬で崩れ、轢き潰された【寄生体】の残骸や巨大な質量の体当たりをまともに背後から食らった【暴徒】が、石灰岩の破片のごとく四散していく。
そして、吹き飛ばされた人垣の後ろから、“ソレ”はキャタピラーを軋ませながら姿を現した。
└(;メ*゚ヮ゚*)┘「うっそでしょ………………」
“史実”とは若干異なる、やや明るめの茶色に近いカラーリング。
下部装甲の両脇に描かれる、青いアイアンクロスの真ん中に「洗」の一文字が施された特徴的な“校章”。
上部装甲左側面に鎮座する、うまく特徴を捉えたデフォルメ絵のふてぶてしい表情をしたチョウチンアンコウ。
鈍い輝きを放ち前方を睨み据える、24口径75mm KwK 40 L/43砲塔。
紛れもなくそれは、第二次世界大戦においてナチス・ドイツ帝国が運用した中戦車、【W号戦車】のF型だった。
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