202: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2023/04/05(水) 23:27:19.33 ID:hz8Qtao20
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今でも覚えている。ハッチの隙間から流れ込んでくる水で、車内が徐々に満たされていく恐怖を。
今でも覚えている。どれ程大声で助けを求めても、周囲で轟轟と唸る川の音に掻き消されてその声が誰にも届かぬ絶望を。
『小梅さん、皆さん、大丈夫ですか!!?』
今でも覚えている。
『脱出しましょう、掴まってください!!』
ひたひたと迫りくる死の気配を振り払う、凛とした声を。
あの“戦場”で唯一、私達を助けるために差し出された掌を。
私と同い年でありながら、自らの危険も省みず仲間を救いに来た、気高く勇敢な少女の姿を。
あの人は、私なんかより遥かに多くのものを持っていた。将来を嘱望され、戦車道の名家から期待され、ゆくゆくは世界にさえ羽撃く力があった。なのにあの人は、それら全てを擲って、私なんかの命を救ってくれた。
ならば。
当然次は、私の番だ。
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