25: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2022/05/10(火) 13:57:09.11 ID:nm7zvJuf0
「さて、私の名前はなんでしょう?」
「え?」
そんなのわかるわけ……そう言いかけて、彼は口を閉じる。
徳田さんは、いや徳田さんだと思っていた少女の目は真剣だった。
真剣で、それでいてすがるような目をしていた。
なんと答えるべきだろうか。彼が悩んでいると、徳田さんだと思っていた少女は、また口を開いた。
「わからないみたいだから、質問を変えるね。私のこと……好き?」
真っ赤になりながらそう言う、彼女。手を強く握っておく仕草から、緊張しているのがわかる。
彼としても、もう黙っているわけにはいかなかった。
「……うん」
自分でも、もう少し気の利いた返事の仕方はないものだろうかと思ったが、彼は素直にそう告げた。
少女は耳まで赤くなりつつ、口元をゆるめた。
が、また少し両手を固める。
「……から?」
「え?」
か細くなった彼女の言葉に、彼はほぼ反射的に聞き返していた。
「まつりちゃんに……似てるから?」
言葉が脳に染み込むまで時間がかかった。
まつりちゃんというのはもちろん、彼がファンである徳川まつりのことだろう。
似てる? 誰が? 徳田さんが誰に……いや、徳田さんじゃなくて……ん? 徳……
「あ」
「やっぱりそうなの?」
似ているかと言われれば、確かに似ているかも知れない。
目元や、全体的な雰囲気。
遅蒔きながら、彼は気づいた。
「もしかして君は、まつり姫の……」
「妹だよ。まつりちゃんは、私のお姉ちゃん」
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