62:名無しNIPPER[saga]
2022/04/19(火) 17:56:15.70 ID:Bp+rozXx0
次の日、蘭子は一人の部屋で目を覚ました。
元から一人であった訳ではない。
確かに昨夜、おおよそ十時を回ったころ、蘭子は宣告者と閨を共にしたのである。
それがいない。
寝過ごしたのかも知れなかった。
宣告者は、行きさしに「この館には古い契約で宿泊するんだ」と言った。
それ以外頑として語ろうとしない。
蘭子は豁然と不安に襲われる。
彼がいなければ私は何もやっていけない。
するとマホガニーの掛け時計は七時を指示しているのだった。
つまり寝過ごしていないのだった。
……崇高なる宣告者Side
彼は時刻にして六時には起きて庵長イリナメラと話し込んでいた。やはり一連の現象は天岩戸伝説の再演で解決する他ないとの意見で合一した。要するに高天原の天石窟に立ちこうして常世に光を注ぐことで禍を一気呵成に祓おうとのことである。そういう意見で固まったので蘭子にも「南極に行く」などと偽らずして良くなったと胸をなでおろすのだった。
かくして彼は自室に戻る。
道中かれは議論に熱中するあまり蘭子を蚊帳の外にしたと思った。
かれは旅の始まりから蘭子を傍から離したことがなかったのである。
彼が部屋に戻った時蘭子は膝を抱えて泣いていた。
「うおお、どうしたというのかね」
「せ、宣告者様は私をお見捨てになるのですか」
「まさか、誰がそんなことを言ったのかね」
「ううう!」
宣告者は泣きじゃくる蘭子の肩を掴むと、懐に描き抱いた。
「大丈夫だよ。聖人だから、いいんだよ」
「う、う、聖人だからなんですか」
蘭子はしゃくりあげ訥々と言った。
「……」
66Res/52.59 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20