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61:名無しNIPPER[saga]
2022/04/15(金) 09:05:08.69 ID:9kzymQHQ0
その後、蘭子は多神教価値観とは趣を異にするキリスト教価値観と、それに依拠する秘教哲学、イリナメラ庵の教義について触れ、最後に初歩的な魔術儀式についての実践作法を教えた。

「すっごーい! これがイリナメラ錬金法なんだー!」

蘭子は4時間の学習を終え、与えられた自室に帰っていた。蘭子は風呂から上がり、肢体を緩やかなバスローブで覆い隠している。そういう血色のいい悩ましげな風体で、窓際に敷設された木曽檜のロッキングチェアに腰掛け子供のようにはしゃいでいる。彼女は真鍮の大釜を庵祖イリナメラから預かっており、これを使用してアルカナ生成の力量を流出させているのだった。

「ははは。嬉しいだろう」

宣告者は張り出しのバルコニーから言ちた。

「ええ! 嬉しくてなりません!」

「……そういえば、イリナメラさんはどういう素性があるんですか?」

「イリナメラには何の特別な属性はない。イングランド西南部コーンウォール州で生を受け、14歳の夏に認識フィルターを打ち破る。それからの20年をイスラム系魔術結社“知恵の館”の探求に費やし、38歳で全849ページにおけるヘルメス文書の独自解釈を修了、正統修正儀礼会から“マジスター・テンプリ”の皆伝を得、イリナメラ庵を開く。62歳で準奇跡級儀礼魔術“小召喚”を成功させ、19〜24歳相当の女性の肉体を召喚させる。イリナメラはこれに憑依、メイガスとなり、現在に至る」

「つまり、神に属する聖人であり、正真の守護天使である君とは及びつかん卑小ということだ。ゆくゆくはイリナメラなど比にもならない神秘を扱えるようになるだろう」

「その時が楽しみであります!」


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