4:名無しNIPPER
2022/04/02(土) 23:17:14.68 ID:QLtqEEbF0
私はちょっと考えてから、口を開いた。
「…まあ、彼女とは何かということもないけど。言っておきたいのは、私は地方に転属して、不満でいるわけではない」
「それは、わかってます」
「ウマ娘たちに思うように走ってもらいたくてトレーナーをしているのは今も昔も変わらない。ここの子たちはみんないい走りをする子ばかりだよ」
「…トレーナーさんは、がっつかないですよね。普通のトレーナーなら、もっと結果を出すことに執着するのに」
「マルゼンスキーにも言われたことあるよ」
私は懐かしくなって、クスリと笑った。
「それが琴線に触れたんだってさ」
私から少し目線を逸らして、彼女はつぶやく。
「仲、良かったんですね」
「まあね。こういったらトレーナーとして適切じゃないかもしれないけど、いい友人のようだった」
「ふうん。友人」
「彼女の走る姿が大好きだった。貴方も現役時代の彼女の走りを見たことがあると思うけど、見ているこっちも楽しくなるような走りでね。彼女の走りを間近で感じるのは…」
ふと、隣で歩く彼女の頭に張り付く耳を見つけて、私は笑って彼女を撫でた。
「もちろん、貴方の走る姿も大好きだよ」
「や、やめてください…もう。子供じゃないんだから…」
嫌がるように頭の上の手をどかそうとするも、尻尾がぶんぶんと振れている。
可愛い子だ。まるで妹のように思う。こういったら、きっと彼女は怒るだろうけど。
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