257:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 13:16:25.50 ID:XVB8s0iW0
とはいえ、反対に人間側について魔帝陣営と戦う、
という選択肢にも大きな抵抗感があった。
彼は人間に惹かれ慈しむようになったが、
そのような「心」を有したからこそ
魔族への同胞意識も感じるようになり、
魔界への郷愁も抱くようになっていたからである。
そして此度の戦で人間側につくということは、
単に同胞を殺すという問題に留まらなかった。
魔帝陣営と衝突するということは、全魔族の敵となるということ。
スパーダを「闘争の象徴」と信奉してくれている無数の同胞たち、
悪魔的とはいえ、彼らがどれだけの誇り、誉れと憧れを捧げてくれていたのか、
「心」を有している今だからこそスパーダはその篤さを理解できていた。
魔界において至高の英雄とみなに謳われる、
その真の意味に初めて気づいたのである。
しかし人間界側につけば、その全ての思いを裏切ることを意味していた。
そんな処遇はやはりスパーダの「心」をひどく痛ませた。
これは「人間の心を有する悪魔」として自己を確立したがゆえの板ばさみだった。
愛を知った彼は、その純粋さゆえに
両方の世界をも愛してしまっていた。
開戦そのものを回避できれば全て丸く収まりうるが、
そんなものは夢物語にすぎなかった。
魔帝の目的は「世界の目」の強奪であり、
そして最終目的は「全て」を支配することであり、
その悪意は魔帝そのものが倒される以外に潰えることはない。
ゆえにスパーダはどちらかを選択しなければならなかった。
魔界か、それとも人間界か。
彼にとって究極の選択であり、
当然すぐに答えを出せるものではなかった。
くわえて時機も悪く、彼自身が決断する前に周囲の状況が動いてしまった。
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