161:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 12:21:01.43 ID:XVB8s0iW0
3 魔女の決断
人間たちは長い間、
彼らの創造主たるエーシル=ロキだけを信仰していた。
対象がエーシル=ロキだけなのは、
彼らにとって混沌神族は無能な「兄」でしかなく、
天界と魔界はそれぞれ協力者でしかなかったために。
また、そもそも当時は人間自身が神族をも憚らないほどの力と
それゆえの気高さを有していたため、
エーシル=ロキ以外に屈するつもりは一切なかった。
そのぶん、エーシル=ロキに注がれた信仰は篤いものであり、
ロキの隠遁後もその熱意は変わらなかった。
しかしその熱意は徐々に冷めていくこととなる。
重大な問題に陥った際、たびたび人間たちはロキの神託を求めたも、
隠遁後のロキからは助言どころか、
その存在を示す兆候すらなかったために。
また世代交代によってロキと面識があった者が減っていったことも、
信仰の形骸化と認識の希釈化をもたらした。
賢者・魔女は大変な長命とはいえ完全な不老ではなく、
どれだけ壮健な者でもいずれは精神が老いて死が訪れたほか、
生き疲れて死を選ぶことも慣習としてあったからである。
そして最後に、竜王の騒乱が
エーシル=ロキ信仰に致命的な離心をもたらすことになった。
これだけの人間界の危機となっても、
ロキは一切助力してくれないばかりか、
やはり存在の兆候すら示さなかったのだから。
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