佐藤和真「一応、父親だからな」
1- 20
5:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/01(火) 23:51:50.01 ID:zvI7aI9oO
「おっ。見えて来たな」
「あそこに、母上が……?」

王都の外れのスラム街。そこでは乱闘騒ぎが起こっていて、怒号と暴力によって満たされていた。母上を助けないと。でも足が竦む。

「怖いですか?」
「は、はい……」

物陰に隠れて身動き出来ずに息を潜めることしか出来ない僕を安心させるようにアイリス様が身を寄せて肩を抱いてくださり、囁く。

「でも大丈夫。ダスティネス卿は英雄の妻ですから。なにも心配は要りません」
「え?」
「英雄……?」

誰のことだろう。僕と父が、キョロキョロ。

「カズマ様。たまにはお子さんに良いところを見せてあげてくださいな」
「ええー……まあ、アイリスがそう言うなら」

嫌そうな顔をしつつも父は物陰から出て、そして気配を消した。よく注意しないと見失ってしまう。あれはたぶん、盗賊のスキルだ。

「あの人は盗賊だったのですか?」
「まさか。似たようなことをしたという逸話はたしかにありますが、あの方は族風情などではありませんよ」

父は接近する。気づかれずに。背後を取り軽く押してバランスを崩し、しゃがみ込んで足を払い、土魔法で盛り土をして転ばせつつ。

「なに遊んでんだよ、ダクネス」
「カ、カズマ!? 何故お前がここに……いますごく良いところだから邪魔をするな!」
「ロロが来てるんだよ」
「ふえ?」

集団でリンチされていた母上に僕の存在をつげると、まるでスイッチが入ったかのように立ち上がり背筋を伸ばして剣を構えた。

「さて……本気を出そうか」
「遊びは終わりか?」
「ああ。下がっていろ、カズマ」
「なら、俺は後方で支援してやるよ」
「……感謝する」

そこから残党が壊滅するまでは数分だった。
母上の見当外れの斬撃は、吸い寄せられるように敵に当たった。父がそう誘導していた。

「あの方たちはかつて、同じパーティの冒険者仲間で、そして魔王を倒したすごい人たちなんですよ」

アイリス様の言葉が嘘には聞こえなかった。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
8Res/10.53 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice