2:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/01(火) 23:43:27.06 ID:zvI7aI9oO
「おい」
昼近くになるというのに寝巻き姿でソファにだらしなく寝そべり、うつらうつらとしているそいつを睨んで僕は訊いた。
「なんであんたは働かないんだ?」
名門貴族出身の母上は王宮での務めを果たすために朝早く家を出て夜遅くに帰宅するというのに夫であり、つまりは父親であるこの男が働いている姿を僕は生まれてこの方見たことがない。
「逆になんで働くと思う?」
さも面倒臭そうに薄目を開けて質問に質問で返してきた父親にイラつきながらも答える。
「生きるため」
「そうだな。世の中には働かないと生きていけない人が大勢居る。でも俺は違う。働かなくても生きていける。だから働かないんだ」
まるで自分は例外のような戯言に反論する。
「でも母上は毎日働いてる」
「そうだな。じゃあ、どうして働かなくても生きていけるのに働いていると思う?」
「それは、世のため人のために……」
「違うな。あれはただの趣味だ。魔王軍の残党の小競り合いに巻き込まれて嬲られるのを愉しんでいるだけだ」
「は、母上を侮辱するなっ!」
僕がキレると父は身を起こして手を伸ばす。
「悪かったよ、ロロ。お前のお母さんはちょっと頭のおかしい奴だけど、結果としてそれで助けられている人も大勢……は居ないかもしれないが、どこかには居るかもしれない」
戸籍上の父親は頭に手を乗せて撫でてきた。
「母上はおかしくないもん」
「おかしいけど美人だ。そこは誇っていい」
そう言ってにやりと笑う。何故か安心した。
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