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2022/01/18(火) 22:38:27.53 ID:pAViFCvW0
午前十時五十一分。
戦争で巻き荒れた砂塵渦巻く街の中を、一人の若い朱雀兵が歩いていた。
白虎兵、朱雀兵。
彼の前には白や赤といった色を基調とした兵装を纏った死体が、いくつも転がっている。そしてまた、幾ばくも無いままに、彼も死体のうちの一つになることは、想像に難くない。
息も絶え絶えといった様子で、彼は上空を見上げる。見上げれば、巨大な白虎軍の空挺がいくつも浮かんでいる。
戦況は不利。すでに朱雀の領土のほとんどには、虎のマークの旗が鎮座していた。
「ポイントは……まだ先か」
彼は一人ふらふらと歩き続ける。眩暈をこらえながら、彼は重要な任務のために歩き続けた。
途中、何人か赤の兵が密集している場所を見つける。
「みんな……無事か?」
流れ込む安堵感が、彼を確かに弱くする。
こわばっていた両足からは力が抜け、彼は無様にその場に倒れこんだ。
目の前にいる朱雀の女兵と目が合う。
二人とも、力という力を失ったようなありさまだった。
「赤いマントの……若い兵を、みなかったか?」
「見てない」
吐き捨てるように、彼女はそう言った。
「そうか……」
「あんたはなに――」
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