トレーナー「ひたいに油性ペン(極太)で“オグリ”と書かれた」
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2: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2022/01/09(日) 06:34:23.91 ID:7TLsjr9y0
「……っ!?」

 当《とう》の本人はというと、驚きのまま詰め寄るという俺の当然の反応が予想外だったのか、呆然と立ち尽くす。

 こうして自分のしでかした事の大きさをようやく悟ってしょんぼりとするオグリを引き連れ、トレーナー室に戻ったのである。

「しかしこれどうするんだよ……洗っても落ちないし、油性で書いただろ」

 完全に落ちるのにいったい何日かかるだろうか。そして落ちるまでの間、中途半端に文字が残っているという下手をすれば今よりも恥ずかしい状態で過ごす事になってしまう。そんな風に悩んでいると――

「安心してくれ。毎朝しっかり私が上書きしよう」

 何一つ安心できない事を、胸を張って言い切るウマ娘がいた。

「ていっ」

「いたっ」

 力を抜いて落下させただけのチョップをオグリの頭に落とす。
 別に痛くはないはずだが、叩かれると思っていなかったのかオグリは悲しそうにこちらを見上げるのであった。

「その……怒っているのか?」

「まあ……正直なところ、少しは怒っている。そしてそれ以上に悲しいんだ。オグリが俺にこんな事をするってことに」

「……え?」

「考えてもみてくれ。オグリが寝ている間に、俺の名前を書かかれたらどう思う?」

「か、書いてくれるのか!?」

 ……どうやら例えが悪かったようだ。オグリは期待にあふれた目でこっちを見ている。

 考えてみればオグリは自分にとって嫌な事を他人にするような子ではない。つまりオグリにとってひたいにデカデカと油性ペン(極太)で名前を書かれるのは嫌な事ではなく、むしろ喜ばしい事のようだ。

「なあオグリ……悪気が無いのはわかったけど、どうして俺に自分の名前を書いたりしたんだ? 君は理由も無しにそんな事をする子じゃないだろ」

「……シゲさんに言われたんだ」

「シゲさんに?」

 シゲさんというのはたしか、笠松でオグリを応援してくれている気さくなオジサンだったはず。
 あの人がなぜ……?

「シゲさんが言うには、私がこれからも幸せであるためには、しっかりとトレーナーをモノにしないといけないらしい。だからトレーナーに私の名前を書かせてもらったんだ」

「し……シゲさん」

 多分シゲさんは、これからも走り続けるオグリには俺が必要だと思ってそういう言い方をしたのだろう。
 しかしシゲさん。オグリにはもっとストレートに言わないとわからない事は、貴方だって知っているでしょう。


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