馬場このみ「シクラメンの花の香」【ミリマスSS】
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15: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2022/01/06(木) 23:04:10.92 ID:dy8vOWdb0
それから、私は念願の温かいものをということで、焼き白菜と豚肉の炊いたんを注文し、お酒は『九州菊』を燗で頼んだ。炊いたんは出汁がたっぷりと入っていて、そのうえ、焼いた白菜が香ばしく、とても美味しいものだった。九州菊は福岡のお酒で、うまみのある昔ながらのお酒の味で、炊いたんによく合った。
だんだん胃袋も満たされ、酔いの加減も丁度よくなってきた。要するに、出来上がってきた。
向こうの座敷にいた人たちは、会計を済ませたのか、陽気な声を上げながら外へと出ていった。あの調子だと、おそらく彼らはあのまま二次会だろう。
店内が静かになり、有線もよく聞こえるようになった。ちょうど曲が変わったばかりだったのか、哀愁漂うギターのイントロが流れ、それから、静かだがよく通る男性の声が響いた。
「あ、『シクラメンのかほり』」
「懐かしいな」
「そうね、ウチのおじいちゃんがよく歌いよったもんね」
「そうそう。馬場のおじいさん、上手かったよなあ」
機嫌がよくなると、風呂場や、宴会の席でよく歌っていた。十八番というやつだ。最近も家の近くのカラオケ喫茶で、気分よく歌っているらしい。
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