51: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2021/12/20(月) 13:37:18.17 ID:86/EQe0g0
「城が傾くのは、私が美人だからですよ〜? 私を巡って沢山の人が争い、奪い合い、そして身を滅ぼしていくからです〜……」
そのせっかくの笑い声が、話していくうちに沈痛なものに変わっていく。
「美しく、珍しい花があった時、人はそれを自分のものにしようとするんですよ〜ましてその花が、世界にひとつだけ……その人しかいないのだとしたら……」
「その人を巡って争いがおこる……城が傾く、ってわけか。じゃあ傾国っていうのはつまり、朋花をめぐって国が傾いちゃう事態になるって意味なんだ……」
「無論、傾城や傾国というのはひとつの言葉です。ですが実際に、私を巡って争いがあったことは事実なんですよ〜」
そうか、これが朋花が聖母さまになるという理由なんだ。
奪い合いにならないよう、誰のものにもならないよう、自分を好きになった人には平等にそして一生懸命に応えようというのだ。
「事実、こんなことが〜……」
今や朋花の声は、沈痛を通り越して泣きそうですらある。
これ以上、彼女に喋らせたくない。
私は朋花の話を遮った。
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