【コンマ】ウマ娘とトレーナーがラーメンを食べに行くだけのスレ
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205: ◆/4adlfiarI[saga]
2022/01/29(土) 18:56:24.98 ID:4vJdc4mNO


「ええ。本当に不幸中の幸いでした。一応念のための確認ですが、メディカルチームは何と」

「進路変更に伴う軽度の肉離れは完治したと。本日より通常のトレーニングに戻って結構です」

「やったぁ!!」

カレンがピョンと飛び跳ねる。

「これでまたお兄ちゃんとバクちゃんと一緒に練習できるね♪」

「ハイッ!これからも切磋琢磨いたしましょうっ!!
ところで、前から不思議だったのですが、なぜカレンチャンさんはトレーナーさんのことを『お兄ちゃん』と呼ぶのですか?」

「だって、お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん。ね?」

カレンが悪戯っぽい笑いを私に向ける。私は乾いた笑いを浮かべ、代理がまた軽く咳払いをした。


そう、事実関係を知らないバクシンオーが不思議に思うのも無理はない。
というより、トレセン学園でもこの事実を知るのは目の前の樫本代理や駿川女史、そしてシンボリルドルフなどごく少数に留まる。


そう、カレンチャン……戸籍名「天王寺カレン」は、私の実妹だ。


代理が困ったように私を見る。

「バクシンオーさん、カレンチャンさん。そこまでにして下さい。天王寺トレーナーと、少しお話があるので」

「ハイッ、わかりました!!」

「は〜い♪」



「いつまで秘するつもりですか?」

代理が厳しい目で私を見る。私は静かに緑茶を口にした。

「彼女の卒業まで。平等の面からそうすべきであると考えております」

「それはもっともなことです。ただならなぜ敢えて手元に?」

「……亡くなった母の望みなんですよ。あいつを一人前のウマ娘にしてくれと。
男ばかり生まれた後で、やっとできた娘でしたから、思い入れはよく分かります」

そう、母はウマ娘だった。体質が弱く、競争バにはなれなかったが。
その代わり、父と共にスポーツ医学の研究に没頭した。自分が果たせなかった夢を、いつの日か生まれる娘に叶えてもらうがために。

ただ、そう上手くはことが運ばないものだ。学生結婚で生まれた私の他、下の3人は全員が男だった。
諦めかけていた時にようやく生まれたのがカレンだった。……が、高齢出産の負担は重く、早いうちに母は世を去ってしまった。

それから母代わりとなって、私が彼女を育ててきた。
母の夢を無理に託そうと思ったわけではない。ただ、賢いあいつは母の遺志を敏感に感じ取り、ここまで育った。ブラコン気味になってしまったのはそのせいもある。
だからこそ、彼女に甘くならないようにと、一つのルールを課した。


トレセン学園では、あくまで「トレーナーと生徒である」ということだ。


カレンもそこは理解しているはずだ。ただ、私への呼び方だけは「お兄ちゃん」で変わらない。


代理が息をつく。

「あまりご無理をされないよう。ああいうことがあった後ですから、お気持ちは分かりますが」

「肝に銘じておきます」

命の危険すらあった大事故の後だ。あいつもトレーナーとしてではなく、兄としての私に甘えたい思いはあるのだろう。
さりとて、どう距離感を作るべきか。バクシンオーもいる手前、彼女が求めるようには恐らくできない。


……とりあえず、飯でも誘うとしよう。チートデイも近いことだ。





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