69:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:07:49.72 ID:u50g9+A20
医務室を出て、私は舞台裏に走った。急ぐ私を、スタッフや他のアイドルがぽかんとした顔で見送っていた。
「はっ」
私は走りながら、笑ってしまった。
一体、自分はなにしてるのか。そんな無茶、通るはずがないじゃないか。あまりにも馬鹿らしくて。
でもいいじゃない、馬鹿なことって。
今は、馬鹿をしたい時だった。
私は、舞台裏でスタッフさんに支持を出しているプロデューサーを見つけた。
プロデューサーは、私に驚いていた。
「どうしたの、奏。そんな急いで」
「お願い……プロデューサー」
「……まさか、文香のこと? 悪いけど、あの状態じゃ舞台には立たせられない。奏だって、文香の様子を見てくれば」
私は、首を振った。
「違うの、プロデューサー」
私は乱れている息を整えながら、脳内で最後の抵抗を試みる。
こんなバカ、やめておいた方が、いいよ。
貴方らしくない。恥をかくだけ。
そうね、と私は笑んで、口を開いた。
「私に、歌を歌わせて。文香の代わりに、私の歌を歌わせて」
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