50:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 22:24:49.02 ID:u50g9+A20
落ち着いた薄暗い照明の下で、ガラスコップの中の液体は黒く、深く見えた。
壁につけられたカウンター席のスツールに、私と文香は並んで座っていた。
室内は打ちっぱなしのコンクリートの狭い店内。前に文香に案内された喫茶店が都心に取り残された歴史感じるシックな店だとすると、この店はもっと現代的で、ドライだった。
文香は、興味深そうに店内を見渡した。
落ち着いた店内のせいか声も、自然と囁くようになる。
「素敵な店ですね、喫茶店というより、なんだかお酒のお店のようですけど」
確かに作りはバーといわれた方がしっくりくる。でも、香るのは甘いコーヒーの香り。
ここのコーヒーは、少し角の取れたまろやかな味だった。
「前に文香に案内してもらったでしょ。あの後、このあたりの喫茶店を探してみたら、ここが出てきたの」
このコーヒーショップも、事務所からそう遠くはない場所にあった。
路地を入った奥にある小さなビルの地下だった。
「ここ以外にも、色々あるのよね、この辺りって」
「そうだったんですね……知りませんでした」
「もし文香がよかったら、今度喫茶店巡りしてみない?」
「それは……素敵ですね、とても」
「よかった」
気になっているけど、まだ行っていない店はいくつもある。
一人でもいいけど、文香が一緒なら、それもとっても楽しいだろう。
85Res/117.90 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20