42:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 22:09:03.77 ID:u50g9+A20
言葉を発せられないでいる私をしり目に、プロデューサーはつづけた。
「奏はまだ、ソロで立てる実力がないと判断したんだよ」
「それは……おかしいです」
否定を口にしたのは、文香だった。
「奏さんで足りていないなら、私なんてなおさら……」
「そんなことないさ。文香は十分素敵だよ」
「私はそうじゃないって」
「そりゃあ、パフォーマンスは上手いよ奏は。それだけだったら、同期の誰にも負けてない。でも上手いだけなんだよ」
「上手いことのなにが悪いの」
「悪いね。上手いだけなら君である必要はないんだ。ただ上手いだけならごまんといる。でもそれじゃあ意味がない。きっと君は、なんでも上手くできすぎるんだよ」
私の中で怒りの炎が急速に燃えあがって、次の瞬間にはそれは冷気となって体中に浸透していった。
「……それが悪いことなの?」
「それ自体は悪くないことだけど……だから君は、そこで止まっちゃってる。小手先ですましちゃってるんだ。最初は、もしかしたらうまくいくかもしれない。だけど、そんなのはすぐに続かなくなる。人間って、案外みんな感情には敏感なんだよ。君の奏でる音が、張り子にすぎないとバレちゃったら、あっという間に君は見向きもされなくなる」
「B級映画のセリフみたいね。ありきたりで」
「そういうところさ」
「どういうこと?」
「だからつまり……君は周りを見下してるんだ」
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