32:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 21:52:41.46 ID:u50g9+A20
いつかの雨の日、二人でダンスを踊った後のことだった。
『奏さん……ミュージカル映画、お好きなんですか?』
『というより、映画全般が好き。言ってなかったっけ?』
こくりと、文香は頷いた。
『もちろん、ミュージカルも大好きだけど』
私は、とっさに思いついた映画のタイトルを述べた。
『それは……ずいぶん古い映画がお好きなのですね』
口にしてから、しまった、と少し思ってしまった。述べたミュージカルは、本当に古い映画だった。ロミオとジュリエットを現代に置き換えた作品。
恋愛映画は苦手だけど、ミュージカルになるとどうしてか自然とみることができた。
でも、いつもだったらもっと新しい映画を挙げていたのに。きっと、文香が読んでいた、古いハードカバーのせいだ。
『映画はあまり詳しくないのですが……おすすめの映画などはありますか?』
訪ねてきた文香に、私はいくつかの映画を挙げた。その中に、その映画はあった。
ある詐欺師が、謝ってギャングの金を盗んでしまった結果、恩師を殺されてしまう。その復讐のために伝説的な詐欺師の元に向かい……というお話。
これもかなり前の作品だ。
好きな映画だけど、普通、おすすめを聞かれたらその映画を上げることはない。もっと最近の、観やすい映画を上げるようにしていた。
でも、文香ならと思って、私はその映画の名前を挙げていた。
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