15:wenppy ◇28goFgfuuI[sage saga]
2021/11/23(火) 20:43:31.00 ID:Rr9Z2Vx8O
「取ってきたぞ」
「ありがとう、プロデューサー!」
プロデューサーは違和感がない程度に、先ほど座っていた位置より端側に腰を降ろす。
「じゃあじゃあ、さっそく半分こしよっか! どっちのケーキから分ける?」
めぐるはミルクレープの皿を寄せて、その正面までスライドしてきた。自然と距離が縮まる。
「……そうだな、まず俺のからにするか」
再び感じる彼女の体温。
せっかくの位置取り調整も無駄となってしまい、甘い香りに意志が揺らぐ。
早くケーキを分け切って、適切な距離を保ちたい。
「…………──」
プロデューサーは自身の方舟にナイフを入れようとして、固まった。
何となく救済の方舟を切断するのが躊躇われたのだ。
もちろんこれはただのティラミス。
切ったからといってどうこうなる訳ではないのだが、先程の話の流れを思い出し、縁起が悪いような心持ちになった。
切ることが正しい選択のはずなのに、切ってしまったら取り返しがつかないような。
船がなければ陽光の届かない海底に沈んでいってしまうのではないかと。
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