藤原肇「千夜さん、一緒に釣りに行きませんか?」
↓ 1- 覧 板 20
39:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 14:42:29.89 ID:/ZuqsV3u0
魚がいるであろう狙い目のポイントについて講釈を受け、肇さんの見様見真似でイクラを付けた釣り針を川に放る。
竿を構えたまま、肇さんは岩の上にジッと立ち尽くしている。
しばらくは、待ち――か。
川の流れは思いのほか速く、ザァザァと立てる水の音も小さくない。
しかし、決して不快な音ではない。
うるさかったり、まして追い立てられるようなものではなく、不思議と落ち着く音だ。
時間にして5分程度、だろうか。
肇さんが竿を振り上げ、針を回収した。
針の先に、餌がついていない。
「あぁ、やっぱり」
気恥ずかしそうに、肇さんが私に向けてはにかむ。
餌だけを食べられてしまったらしい。
「魚はいる、ということですね」
そう確認すると、彼女は嬉しそうに頷いた。
「はい」
肇さんに倣い、私も竿を上げる。
二人で顔を見合わせ、同じように笑った。
80Res/59.35 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20