【安価・コンマ 】ロボットのパイロットとして生きる【オリジナル】
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886:名無しNIPPER[saga]
2022/02/06(日) 22:05:42.74 ID:4RtrxWKy0
カズミはアルトに言われた地点に急行すると彼女を回収、脱出の準備を始めた。

「準備はいい?」

「ああ。いつでも行けるぞ」

「しゅっぱーつ!」

そしてその場から移動しようとしたその時。

「うそ...」

目の前にシュヴァリエルージュの小隊が立ち塞がった。

(1機だけでも手強かったのに!)

加えてレーダーに警告が表示される。

「これ、この識別番号はブルトニアの...!」

その数は少なくとも10数機、おそらくその後ろには予備兵力も控えているだろう。

ガザレム軍もそれに気付いたのか素早く片をつけようと武器を構えた。

「駄目だ...」

「どうした、カズミ?」

アルトの声はカズミの耳には入っていなかった。

「こんな数を相手に、逃げられる訳がない...!私のせいだ!私が...」

「いいや違う。アタシ"達"のせいだ。カズミを止めなかったアタシも悪い。だから...アタシも一緒だ」

「っ...!」

そんな2人のやり取りを見ていたエヴァがふと呟く。

「お姉ちゃんはずっとエヴァを守ってくれた。だから、こんどはエヴァがお姉ちゃんを守るよ」

「え──」

するとエヴァは目を瞑ってハミングを始めた。そのメロディーは戦場には似つかわしくないゆったりとした穏やかなもので、だけど少しの荘厳さが感じられる。

「え、エヴァ?」

「カズミ...見ろ」

アルトに促されてモニターを見ると、さっきまで晴天だった空があっという間に曇天に様変わりしていた。

「いったいどういう──」

カズミの疑問の言葉は、突如鳴り響いた轟音と辺りに走った光に打ち消された。

目の前のシュヴァリエルージュに雷が直撃したのだ。それも一度で終わらず、続けて他の機体にも雷が落ちている。

「ははっ!やったな、カズミ!エヴァは神の子か何かなのか!?」

「わ、わからない...」

2人の会話をよそになおもエヴァはハミングをやめない。

「とにかく今のうちに行こう!」

そうして3人はガザレムからの逃避行を始めた。

その道中で何度もガザレム、ブルトニアの軍に遭遇したが、その度に落雷が敵機を蹴散らした。何本もの閃光が枝分かれしながら降り注ぐその光景は、さながら神の怒りが地上に振るわれているかのようだった。

だが、やがてアルトが一つの異変に気づいた。

「おい、どうしたエヴァ!すごい熱じゃないか!」

そうアルトに問われ、肩を掴まれても、エヴァは歌い続ける。そしてそれに呼応するように雷がADMの行く道を切り開く。

「よく分からんが、早くエヴァを休ませてやらないと!」

「わかってる、飛ばすよ!」

カズミは操縦桿を握る掌が汗ばむのを感じながら、考えを巡らせる。

(前にもカナアンでエヴァの調子が悪くなったことはあった。...でも今回のは明らかに違う。きっとあのハミングだ。私たちを助けるために...!)

カズミは掌が痛くなるほど強く操縦桿を握りしめながら、必死でガザレムから脱出したのだった。


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