【安価・コンマ 】ロボットのパイロットとして生きる【オリジナル】
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316:名無しNIPPER[saga]
2021/10/28(木) 22:41:43.31 ID:GlqIC2UX0
「ん...」

カズミは目を覚ました。といっても目の前は真っ暗で何も見えないが。

(エヴァは無事かな...)

本当は今すぐ駆け出して彼女を探したいくらいだったが、どうやら特務機関に捕らえられた時のように手脚は縛られており、どこかに繋がれているらしく自由には動けない。
おまけに目隠しをされているせいで周りの状況はさっぱり分からない。

少しでも何か手がかりを得ようとして耳を澄ませていると、扉の音がして、誰かが部屋に入ってきた。

「目は覚めたかな、お嬢さん」

聞こえてきたのは落ち着いた、だが酷く冷たさを感じさせる男性の声だった。

「私といた女の子、あの子には何もしないでください」

「...一言目がそれとは、よっぽど彼女のことが大事みたいだね」

カズミは男の言葉に返答しなかったので暫く沈黙が続いたが、男が口を開いたことでそれは破られた。

「安心しなさい、無事だよ。それよりも聞きたいことがある」

「テロリストに話すことは何もありません」

その言葉を聞いた男の乾いた笑いに部屋は包まれた。

「テロリスト、か。私に言わせれば君たち特務機関の方こそテロリストだ」

「っ!?」

「そうだろう?政治的な目的を暴力に訴えかけて解決する。特務機関も立派なテロリストだよ」

カズミは自身の聞き間違いかとも思ったが、確かに男は特務機関の名を口に出した。
ブルトニアでもその存在を知っている人間は、特務機関の人員を除いたら指で数えられる程度しかいないはずだ。

「あなたは何者ですか」

「私かい?ガーディアンオブエデンの...そうだな、ゼウスとでも名乗っておけば彼女にも分かるかな?」

「はい?」

「ああ、すまない、こちらの話だ。それで話してくれる気にはなったかい?」

「...いいえ」

ゼウスと名乗った男が何者であれ、自分達を攻撃してきたことには変わりない。それに、何を聞かれるか分からないが口を割ればそれで用済み、エヴァ諸共殺される可能性も否定できない。

「ふむ。君は何故そこまで特務機関に忠誠を誓うんだい?どうやって参加したのか詳しい経緯は分からないが、その年齢ならほぼ選択肢も与えられずに無理やり入らされたんじゃないかい?」

「...」

「例えば偽装された葬式とかね」

この男は特務機関のことをどこまで知っている?何故ガーディアンオブエデンという一介のテロ組織にすぎない人物が特務機関の事を?

様々な疑問がカズミの頭を駆け巡る。

「それに君も知っているだろう?メルクリウスの採掘は明らかにこの星の命を削っている」

確かにメルクリウス採掘による公害や環境問題は楽観視できるものではない。

「採掘のための乱開発による自然破壊、気候変動、自然災害や天変地異。これらがメルクリウス採掘による弊害であることは火を見るよりも明らかだ」

カズミもこの議論は教科書で見かけた。

「それに被害を被っているのはエデンだけではない。メルクリウス採掘のため、住み慣れた土地を追われ放浪者とならざるを得ない人々。メルクリウスから精製できる麻薬の餌食となる者たち」

これらの話もカズミは聞いたことがある。だが実際に目にしたわけではないので危機感と言えるほどの感情を持っているわけではない。

「メルクリウス採掘はこの星に生きとし生けるものを、そして星そのものを殺さんとしている。それを止めようとしている我々は──」

男はそこで言葉に詰まった。

「...そう、星の守護者だ」

そして捻り出された言葉には自嘲の念が込められているように思えた。

「...話してくれる気にはなったかい?」

男の質問にカズミは無言で応えた。

「そうかい...まあ、いい。なら、君にはもう少し現実というものを見せてあげよう。その時にはきっと君も考えを変えるさ」

そう告げると男は部屋を出て行った。


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