【モバマス】小松伊吹「光の海にて」-SS速報VIP

【モバマス】小松伊吹「光の海にて」

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1: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:24:48.50 ID:gC1pVX3Y0

※小松伊吹がストリップダンサーになった話です。
※本人のセリフはありません。
※全年齢です。セックスシーンとかは全くありません。

俺は重い足取りで下街の路地を一人で歩いていた。

大通りと違ってそこはどことなく静かな澱みが感じられ、それがまたこの塞いだ気分に影を差してくる。

向かう先はとある劇場。

かつての担当アイドル――小松伊吹はそこでダンサーをやっている。

それを知ったのはつい最近、偶然居酒屋で前社長と会った時だ。

「久しぶりだね」

一人で焼酎を飲んでいる時、いきなり肩を叩かれたので酷く驚いた。

その初老の男は良く知っている気さくな笑顔を見せながら隣に座った。

「しゃ、社長!?」

年齢相応の穏やかな物腰の紳士は、まさに前社長だった。

彼には入社当初から目をかけてもらっていた。

新社長が就任するまで、俺もそれに応えるように働いていた。

「君、あれからどうしてるね？」

俺の受け取ったグラスに新しく頼まれた酒が並々と注がれていく。

「はぁ……恥ずかしながら……」

……俺は恥を忍んで現状を伝えた。

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2: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:26:39.86 ID:gC1pVX3Y0
プロダクションに籍を置いていた時、新人アイドルの小松伊吹をプロデュースしていた訳だが

彼女との関係を週刊誌ですっぱ抜かれた事件が起きた。

ネオン街で肩を預けている瞬間を撮られたのだ。

3: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:27:54.89 ID:gC1pVX3Y0
「……なるほど、神経質な社長（かれ）がやりそうな事だ……」

俺の話を彼は噛み締めるように聞いていた。

申し訳ない思いで胸が一杯になった。

4: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:28:23.45 ID:gC1pVX3Y0
「……!?　あの、これは……！」

「おや初めてかね、こういう『踊り子』を見るのは？」

彼の言う劇場とはつまり、ストリップ劇場の事だったのだ。

5: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:28:50.04 ID:gC1pVX3Y0
「伊吹君は素晴らしいステージを次々とセルフプロデュースしている。評判もすこぶる良い。
　本当なら私も、もっと大きな劇場で彼女を羽ばたかせてやりたいのだ。
　あの劇場ではいささか力不足の感は否めんのでね」

「……伊吹……」

6: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:29:20.88 ID:gC1pVX3Y0
　　　＃　　＃　　＃

社長の用意してくれた最前列に座ったものの、俺は肩身の狭い思いがした。

伊吹がストリップショーに身を投じるきっかけを作ってしまっただけに

7: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:29:59.62 ID:gC1pVX3Y0
（……！　これが……伊吹……）

そこに現れたいぶき――小松伊吹は、浴衣姿をしていた。

かつてのパワフルフェスタを思い起こさせる。

8: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:30:41.50 ID:gC1pVX3Y0
その曲が体に染み込んでいくように、彼女はくるくるとステージ一杯に踊っていく。

そこには苦海に堕ちた悲壮感など全くなかった。

――堕ちた？

9: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:31:08.81 ID:gC1pVX3Y0
そのまま、三曲に移る。

その曲のサビが回ってくる頃には、彼女はもう何も身に着けていなかった。

まだ二十歳を少し過ぎただけの若い肢体は、弾けんばかりにハリがあり、新鮮な果実のように瑞々しい。

10: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:31:41.55 ID:gC1pVX3Y0
一瞬の夢のように思えたが、時間は三十分しか経っていない。

俺は無言のまま呆けていた――彼女のダンスに見事、圧倒されたのだ。

彼女は踊り切った。その表現力はアイドル時代とは雲泥の差だった。

11: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:32:17.36 ID:gC1pVX3Y0
最初、一番目のステージを少し見ただけで帰ろうとしていた俺は、結局劇場に残る事にした。

伊吹の境遇を思えば、顔も合わせられないのだが、彼女のダンスをもっと見たくなってしまった。

図らずもデビュー当時の気持ちを思い出している。

12: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:32:47.36 ID:gC1pVX3Y0
このラストショーでは、端から激しいビートに乗って彼女はステージ上を踊り狂う。

命を宿したかのように彼女のポニーテールが肩を頭上を、力強くうねりを上げて暴れている。

そして合間合間に差し込まれていく、切れのあるブレイクダンス。

13: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:33:14.87 ID:gC1pVX3Y0
暗転して再びライトの前に彼女は現れた。

「――！」

伊吹の歌だ。あの時のように、彼女自身がその口で歌っている。

14: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:33:42.15 ID:gC1pVX3Y0
「皆、ありがとう！」

ショーの後にはそれぞれの踊り子のオープンステージが控えている。

伊吹はその場に体操服姿で現れた。

15: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:34:14.91 ID:gC1pVX3Y0
　　　＃　　＃　　＃

「――どうかね？」

ぼんやりと席に座っている俺に、隣から聞き慣れた声が話しかけてきた。

16: ◆K1k1KYRick[saga]
2021/10/02(土) 02:34:44.73 ID:gC1pVX3Y0
「……私は何人もの娘を、ここからタレントとして、アイドルとして売り出した。
　アイドルは清らかなもの、ストリップは汚れたもの――そんな境界を敷く必要など本来どこにもないのだよ」

「はい」

17: ◆K1k1KYRick[sage]
2021/10/02(土) 02:37:18.91 ID:gC1pVX3Y0
以上です。コロナが収束したら是非偏見を捨てて一度この世界を観てみる事をオススメします
きっと予想しなかった感動に巡り会えます

18:名無しNIPPER[sage]
2021/10/02(土) 06:40:03.52 ID:P0UadbTDO
ストリップは……前科持ちの原因になったそれなんで見たいと思わないや

19: ◆K1k1KYRick[sage]
2021/10/02(土) 17:00:34.59 ID:gC1pVX3Y0
>>18
分からないでもないです、ダークなイメージがあります
逆に自分はストリップにそういうイメージを強く持っている読み手さんほど、リアルストリップ見てほしいです

20:名無しNIPPER[sage]
2021/10/02(土) 17:07:46.70 ID:AzTH4XanO
リボンさんとかまだいるの？
パッて投げてサッと引く職人芸見てみたい

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