69: ◆QlCglYLW8I[saga]
2021/09/28(火) 23:28:08.18 ID:AjfzXomJO
「僕も、だって?」
「その可能性はかなり高い。ただ、完全に『思い出してはいない』。正直、それでよかったとは思ってるけどね」
「もう少し、ちゃんと説明してくれ!」
「さっきも言った通り、それにはまだ時期が早い。あなたがもう少し、『未来の記憶』を思い出してからの方がいい。
もっとも、人格そのものまで『思い出されたら』、僕はあなたを消さなきゃいけなくなるかもしれないが」
「消す?どうして?」
「僕らにとって、あなたは要監視対象だ。これも今の段階じゃ詳しく言えないが。とりあえず、今のあなたは危険じゃない。むしろ、協力者になり得る」
「コナン」が男の方をまた見た。
「……言っていいかな、父さん」
「『コナン』、構わない」
「了解」
「コナン」が僕の目を、じっと見つめた。その圧は、小学生のそれじゃない。これに匹敵するのは、青山教授ぐらいだ。
「竹下さん、あなたにしてもらいたいことがある。エバーグリーン自由ケ丘の倒壊を防いで欲しい。何としてでも」
「……え」
「あの倒壊による死者は413人。その中に、あなたの恋人である木ノ内由梨花さんが含まれている。
ここで重要なのは、木ノ内さんを救うことじゃない。413人の命を救うことだ」
「ど、どうやって!?」
「倒壊事故の原因は、事故直前に起きた震度5の地震によるものとされている。……ただ、真実は不明だ。だから、それを明らかにしてほしい」
「僕は、ただの大学生だぞ!?そんなことが、できるわけ……」
「コナン」が微かに笑った。
「協力者は、既に動いているよ。そして、エバーグリーン自由ケ丘に行く機会がある君なら、きっと役立てるはずだ」
「協力者?」
「そのうち分かるさ。そして時間が経てば、君も『目覚める』ことになる」
「……警察には」
「基本的に、言っても信じないだろうさ。もちろん、今夜のことも。それに、よしんば信じた場合は、確実に面倒なことになる」
「コナン」の言うことには、妙な説得力があった。話し方含め、この少年がどう見ても見かけ通りの年齢でないのは明らかだった。まるで「見た目は子供、頭脳は大人」の、あのコナンのように。
「由梨花には、話した方が」
「やめておくべきだ。いきなり死期を告げられて、平静でいられる人間がいると思うか?」
その通りだった。しかし、こんなことを、いつまで秘密にできるのだろう?……正直、自信はない。
「君たちが、解決に動けばいいじゃないか」
「そうしたいけど、僕らには別にやらなきゃいけないことがある。何より、エバーグリーン自由ケ丘に、自然な形で入っていけるのは、あなただけだ」
そう言うと「コナン」は、ワンボックスのドアを開けた。
「また会うことになるだろうね。とりあえず、あなたの方でも探ってみてくれ。協力者からの連絡も、近いうちに来るだろう」
降ろされた僕は、ワンボックスが走り去るのを茫然と見ていた。
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