34: ◆QlCglYLW8I[saga]
2021/09/25(土) 22:16:12.52 ID:rdad/mqRO
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「いや、だから二次会はいいって」
ニヤニヤしながら、目の前の金髪の男があたしの手を掴んだ。酒臭い息が髪にかかり、すごい不快な気分になった。
「そんなこと言わないでよお。木ノ内ちゃんが来なきゃ盛り上がらないんだって」
男の後ろでは、あたしと一緒に来た優結が別の男に絡まれていた。彼女は酔って意識が朦朧としているみたいで、男のされるがままになっていた。
しまった、こんな合コンに来るんじゃなかった。
セッティングは同じゼミを取ってる葵だった。遊んでいるという噂があって進んで絡もうとしなかった子だけど、彼氏と別れてしばらく経って人寂しかったからか、つい合コンの誘いに乗ってしまったのだ。
合コンが行われる創作料理の居酒屋に着いてすぐ、あたしは来たのを後悔した。
……「ヤリモク」だ。
男たちがマトモな大学生じゃないことを、すぐにあたしは理解した。
葵は慶應の子だって言ってたけど、本当かはかなり怪しい。もし本当だとしても、浅く焼けた肌とこれ見よがしのアクセサリーが、彼らが近付いてはいけないタイプの連中だとあたしに語っていた。
一次会の間、男たちは執拗に酒を飲ませようとしてきた。葵はもう男の一人と姿をくらませている。
あたしは適度にあしらって時間が過ぎるのを待った。上手く切り抜けられるだろうと思っていたのだ。
……甘かった。
優結の手を引いて帰ろうとした結果がこれだ。少し歩けば道玄坂のラブホ街がある。こんな連中に半分無理矢理なんて、最悪過ぎる。
「だから嫌だって言ってるでしょ!!」
「えー、いいのかなあ?お友達、一人じゃ寂しそうだよお?」
葵と違って、優結はあたしの大切な友達の一人だ。あたしだけ逃げたら、優結はメチャクチャにされてしまうかもしれない。そんな友達を売るような真似は……あたしにはできない。あたしは自分の愚かさに、唇を噛んだ。
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