4:名無しNIPPER
2021/09/20(月) 19:08:23.61 ID:ijUOeYjJ0
「…」
先週の面接を思い出し、ただでさえ暗い気分が更に重くなった。
かぁっと耳が赤くなる感覚がする。
「一度頭を冷やそう」
そう呟き、俺は大学に行った。
大学3年の3月からみんなで打ち合わせしたかのように、黒のリクルートスーツに身を包んだのに、夏を過ぎると一気に元の量産型ファッションに戻る。
秋になると、またリクルートスーツの奴等が増える。
しかし、奴等の話題は就活ではなく、サマーインターンやウインターインターンだ。つまり、一個下の後輩達が就活を始めるのである。
そんな中、4年生の俺は未だにリクルートスーツを着たままESを書いている。
「△先輩、伊藤忠から内定貰ったらしいよ!」
「えーすごい〜△先輩から話聞こうかな〜」
「A先輩、まだ就活終わってないって聞いたけどほんとかな?」
「あーらしいよ。あの先輩、就活上手く行かなそうだったもんね〜」
こういった会話が大学のパソコンルームの至る所から聞こえて来る。
キツい。
気付いたら俺は大学の図書館に移動していた。
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図書館でESを書く。
図書館は静かでいい。ノートパソコンを叩く音と、学生達のささやき声しか、音が存在しない。
「くすくす…」
女子生徒2人の噛み殺した笑い声が聞こえてきた。
瞬間、その生徒の方を振り向く。目が合う。目を逸らす。
俺を…笑ってるのか…こんな時期にリクルートスーツを着て、ES書いてる俺を笑っているのか…!
叫ぶ代わりに、俺は席を立っていた。
早々と図書館を去る。
背中には、12月には似つかわしくないじっとりした汗が染み付いていた。
いつからだろう。
俺は笑っている人を見ると、必ずそちらを見てしまうようになった。
自分が笑われている訳ではないと理性ではわかっている。
しかし、俺の根深にいるものは俺を指差し、お前また笑われてるぞ、と告げる。
笑っている人を見ると、足の先がじわじわと熱くなり、首の後ろにじっとりした汗をかく。
笑われるようなことをしてますか?
何か間違っていますか?
恥ずかしいですか?
おかしいですか?
「教えてくれよ…ハルヒ…」
俺はもう限界だった。
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