54: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/09/05(日) 00:48:13.84 ID:ZnAtS4a30
彼女には申し訳ないが、さすが国公の高校というのが第一の感想だった。教室や廊下、講堂も確かに綺麗で最新の設備が整っていたが、やはりトイレもかなり清潔感があった────と、そんな場合ではなく、洗面台近くで壁に寄りかかる彼女を見る。
苦しそうな表情は見間違いではなかったようだ。今も苦しそうに、深呼吸を何度かしている。顔は真っ青で、やや髪が顔に張り付くほど汗を滲ませている。
「あの、大丈夫ですか?」
わたしは話しかけることにした。彼女が一瞬すれ違ったばかりのわたしのことを認識しているかは怪しいが、気にかけておくべきだと思ったからだ。
「ぇ……あ、は、はい。だいじょうぶ、です」
そう答える彼女は手櫛で髪を整え、わたしの方を向く。ただ、その視線はわたしの視線と交わることはない。
なるほど、と心の中で呟く。
声色、視線、表情から察するに、これは極度の緊張による体調不良のようだ。しかしそれは並大抵のものでなく結構重度のようで、その心労は計り知れない。
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