147: ◆yOpAIxq5hk[saga]
2021/09/12(日) 21:21:48.83 ID:w7jRohRZO
【>>145
2.「たぶん、わたしが勝つと思う」】
自惚れるな。
そういった反応をされることを承知の上、わたしは実直に答えた。
「たぶん、わたしが勝つと思う」
「随分な自信家だな」
背を向け合った状態だが、彼の声色から笑みを浮かべていることは容易に想像がつく。
「だがその真っ直ぐな姿勢は嫌いじゃない。本当に自信があるからこそ、そう答えたんだろう。俺の負けだ。おそらくな」
教室の廊下側一番後ろに座れる荒垣くんは、一見その体格も相まって話しかけることすら躊躇われていた。
しかしこうして話してみると、意外と話しやすい。
わたしのことを『たった一回、そこそこな記録を出しただけの女に過ぎない。自惚れすぎだ』と烙印を押さなかったのも、彼自身に人を見る目が備わっていたからだろう。
その裏付けは、すぐに出来る。
「でも、クラスの中だとわたしが一番じゃないかも」
悪い言い方をすれば、わたしは吹っかける。
彼の見る目は本物か。
競泳で男女一位になったこの二人以外に実力者が潜んでいるという話は、本当に見る目がなければ一蹴するような話だろう。
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