【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」ターボ「3スレ目だ!」【安価】
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269: ◆FaqptSLluw[saga]
2021/10/06(水) 06:28:22.29 ID:FbABJENh0

「君が私だとして――250年待たされるのを、都度4回繰り返されたら、どう思う?」


 ルナは静かに、だけど確かにそう言った。

 冗談だと唾棄しそうなそれを、しかし俺は何故だか冗談であると判断することが出来なかった。

 それが紛れもない真実であることは、少なくとも俺の中では違いようのない真実だと言える。

 250年を4度――つまり、1000年。歴史を現代から遡るのであれば、平安時代の末期にまで至るほどの期間。

 あまりに遠大で、想像すらできないほどの期間。それを理解し、咀嚼し、共感してあげることは、俺にはできない。

 ……取り繕って出た共感の言葉は、きっといたずらにルナのことを傷つけてしまうことは明白で。

 だから、俺が出来ることは。


「……正直に、君に俺の心のうちを話すよ、ルナ」
「……ああ」


 小さく、声が響く。


「――正直な話、1000年という時間が、どれくらい長く感じるのか……俺には想像がつかない」


 相槌も、頷きも返ってこない。ルナ自身も万感の思いをあの言葉に込めたはずで、俺の言葉に対して安易に頷くことは出来ないのだろう。

 俺の言葉に安易に頷くことは、ルナが送ってきた悠久の旅路を彼女自身で矮小化してしまう行為だから。

 それに俺も、ルナの言葉を――想いを余すことなく受け取りたい。これは義務ではなく、俺の願いだ。

 ……続けて、と言わんばかりに、ルナの相貌はこちらを見据えて離さない。どうしたら俺のこの思いを余すことなく伝えることが出来るか――考えて、放つ。

 例えそれが、彼女の想いの一部を、否定することになったとしても。


「でも、でもだ。――たとえ10000年が経ったとしても、俺はマヤノを片時も忘れたりしないと思うし、会いたいよ」
「……その先に待つ事実が、どんなものであったとしても?」
「……ああ」


 俺は小さく頷いて――ルナへと近づく。

 彼女は拒まない。遠ざからない。

 互いの体温すらわかるほどの距離、俺とルナはそこで初めて、お互いの表情を確認する。


「シンボリルドルフ――ルナ、君はどうなんだ?」
「……私が、か?」
「ああ。君が、だ。……俺には、此処に君がいることが答えだと思える」
「……」


 苦しみから逃れる一番の方法は、逃げることだ。

 俺はそのことをよく知っている。マヤノと一緒に暮らした時期、一度目のクリスマス。

 あの時、俺は逃げた、自らの不出来を嘆き、世界を恨み、苦しみから逃れるように。

 雪のように儚く、泥のように絡まる苦しみ。ルナはそれから逃れる方法を知っているはずだ。

 記憶を引き継いでいるという事は、自死すれば記憶を引き継がないことを承知しているという事なのだから。

 それでも彼女は、此処にいる。俺が此処にいるのと同じように、此処にいる。

 共感や同情なんかじゃない。君と俺は似た者同士で、どれだけ傷付いても手放したくないものがあって。それを手に入れるためならば、傷付くことを厭わない。

 いうなれば、この言葉たちが示す意味とは――。


「ルナ、君と俺は――"同じ"なんだよ」


 俺は、ルナが浮かべているのと同じ、柔らかな笑みを浮かべてそう言った。

 


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