【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」ターボ「3スレ目だ!」【安価】
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250: ◆FaqptSLluw[saga]
2021/10/04(月) 01:53:20.97 ID:y4Erd8qR0

 何が、と問う前に、ルナは淡く微笑んだ。月の光に照らされた、彼女のアメジストの瞳が、妖しく、昏く、輝く。


「トレーナーくん、私は一つ思っていることがあるんだよ」


 一歩、俺より先にルナが踏み出した。そのまま軽く勢いをつけて、踵を軸にして体を一回転させる。

 改めて向き直るように顔を合わせる俺とルナ。遅れて体の動きに散らばった髪の毛がふわりと元に戻った。

 その所作に、懐かしさを感じて。でも、その懐かしさがなんだかとても切ないものである気がして。

 俺は思わず、胸に手を当てた。


「君は知るべきだ」


 さぁ、と。風が吹いて頬を叩く。

 月の光が舞い踊る木々によって塞がれて、不思議な煌めきを持ったアメジストの瞳だけが、まるで暗中に浮くように輝いた。

 真っすぐ、そしてしっかりと。俺のことを見据えた両の瞳の真意は――俺には読めない。

 ただただ、まるでそこに元々ある景色であるかのように、無色。そこには何の感慨もなくて、感情がない。そんな気さえする。


「なぁ、トレーナーくん。不思議には思わなかったか?」
「……何を?」


 聞き返す俺に、ルナは少し考えて――そして口を開く。


「いろいろあるが、一番は――なんで約5年も待たされたのに、私が君に強く何かを求めないか、とか」
「……」


 確かに。ルナは約5年の間、俺のことを待ち続けてきたと考えられる。

 彼女の会話の節々からは、俺と彼女がそれなりに親密な仲であったことがうかがえる。そんな相手を目の前に5年も待つことが出来るのだろうか。

 ……俺であれば、否だ。現に、ループが開始してまだ一年も経っていないのに、ターボの記憶を呼び覚ましている。

 理解は出来る。だけど、何故それを今話始めるのかがわからない。


「……理解はできるが、何故その話をしたのかがわからない、という顔だな、トレーナーくん」
「ああ。最初はマヤノに遠慮して、とか、そう言う話かと思ったけど――違うみたいだしな」
「そうだ。私は元から、君のことを唯一無二のパートナーだと信じてやまない一人のウマ娘だ。遠慮する理由などない」


 確実に、しっかりと、言い切った。生徒会長――"皇帝"シンボリルドルフの姿はそこに無く、ただただ一人のウマ娘、シンボリルドルフがいた。

 彼女はどこか切なそうに息を吐いて、でも瞳はしっかりと無を湛えて、俺に相対している。

 等身大の彼女と、等身大の俺とで。

 何故か、そこに、埋まらない感情の壁があるような。


「例えばの話だ」


 待ってくれ、その先を言わないでくれ。


「君が私だとして――」


 いくら願っても、言葉にしなければ始まらない。

 止まることはない。





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