【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」ターボ「3スレ目だ!」【安価】
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25: ◆FaqptSLluw[saga]
2021/09/05(日) 15:15:16.07 ID:v2+k5mIX0
「シンボリルドルフ」
「……驚いたかな。色々と怖い思いをさせてしまった。すまない」


 シンボリルドルフはこちらに歩み寄り、硬直する俺の背中を押した。

 何故ここに彼女が居るのかわからないが、それよりも気になることがあった。


「君が、君がこの光景を?」
「正しく言うのであれば、私ではないよ。何というか……ダウンロードされたファイルを使う感覚に近いかな」


 なるほど、つまりアレ……海で見たヒト型のアレはシンボリルドルフが意図的に見せたものではない、と。


「……で、何故こんなことを?」
「ああ、流石に君の様子は見ていられなかったからね。一つの結果を見せようと思う」
「――結果?」


 シンボリルドルフは頷いて、とりあえずと言うように俺に席を勧めた。

 それなりに長くなる話なのだろう。素直にソファーに腰を落ち着ける。


「さて、まず前提について、だ。何故ループしてしまった世界から君の記憶が消えるか、見当はついているか?」
「……わからない」
「だろう、ね。だから、まずはそこについて説明しよう」


 シンボリルドルフは手を組んで、しっかりとこちらの方を見据えた。


「――トレーナーくんは、”アポトーシス”という言葉を知っているか?」
「聞いたことはあるけど、それが……?」
「アポトーシス……トレーナーくんの知っている通り、プログラムされた細胞死のことだ」


 なるほど、とは思う。ただ、その説明がなぜ今なされたのかが判然としない。


「つまり、だ。君の記憶は世界にとっての毒なんだよ、トレーナーくん」
「……毒? 俺の記憶を持っていると何の不都合があるんだ?」
「バタフライエフェクト。蝶の羽搏きがやがて嵐となる可能性もあるように、君の記憶が存在すると、後の世界に大きな影響を及ぼす可能性がある」
「だから、俺の記憶をループ時に消してる、ってことか」


 確かに、存在するはずのないものに関しての記憶があれば、人々は世界に対して懐疑的になることもあるだろう。

 それは緩やかな衰退を意味する。古今東西、懐疑が深まった組織体は腐り落ちるのが常だ。


「じゃあ、何故担当ウマ娘やその周辺には記憶が残っている?」
「それは良く解らないな。ただ、忘れさせると逆に不都合が発生する場合もある、という事なのかもしれない」
「……つまり、俺が消えた時、記憶が補完されることはなくそのまま”消える”ということか」


 シンボリルドルフは頷く。

 つまり、例えば俺が消えたことによって、俺の関わったところが虫食いのように消え落ちてしまう。

 要所要所ならそう問題ではないのかもしれないが、かかわりが深い――毎日のようにともに居た存在であれば、虫食いは無視できないほどに大きくなる。

 人間やウマ娘を虫食いになぞらえて一つの本に例えるなら、あまりに大きな虫食いはページだけではなく、本全体の損傷に繋がる。

 だから、それを消さないことを選択する。それが脳の機能なのか、それともそれ以外の何かによる効果なのかはわからないが……。

 一定の理解が深まり、俺はふと疑問に思った。


「――何故君はそれを知っている、シンボリルドルフ」
「答えを急かないでくれ、私だって君との時間を楽しみたいんだ、トレーナーくん」


 切なげに微笑むシンボリルドルフ。いつにもまして弱弱しいその表情に、何故だか胸が締め付けられるような気持ちになった。


「ここまでは前提の話。ここからは、選び取ることのできる結果の話だ」



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