【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」ターボ「3スレ目だ!」【安価】
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166: ◆FaqptSLluw[saga]
2021/09/27(月) 01:22:36.71 ID:+3/PprsU0
「――そう言えば、なんだか前にもこんな風にケーキを分けてもらった気がするな〜」


 ケーキを食べるマヤノトップガンを傍目に、紅茶を淹れていると、ふとそんな風に言い始めた。

 彼女のような愛嬌のあるウマ娘であるならば、そのような経験もたくさんあるのだろうか。


「……随分と愛されてるんだな」
「愛されてる、か。マヤ、モテモテなのかな」
「さぁな。でも、君のことを好きな人もいるんじゃないか?」


 そう答えると、うーん、とかなんとか唸り始めるマヤノトップガン。

 少し時間が経てば、彼女なりの答えが”わかる”はずだ。

 茶葉を蒸らす時間の静寂を噛み締めて、俺は息を吐く。


「……ねぇ、キミ。もしかしてだけど――マヤと前に会ったこと、ある?」
「――。いや、ない」
「うーん、ごめんね。マヤ、キミが嘘ついてるってわかっちゃうんだ……」


 ……マヤノトップガンの前では、嘘は通用しない。

 これまで三年ほど彼女との日々を過ごしてきたが、共依存に陥ったあの数か月以外、俺の嘘は全て見抜かれてしまっていた。


「嘘をついてるってことは、キミはどこかでマヤと会ったことがある。そうでしょ?」
「……まぁ、そうかもしれないけど。それがどうした?」
「なんだかね、こうしてケーキを食べさせて貰ったのが、初めてじゃない気がするんだ」


 そう言うと、マヤノトップガンはフォークを皿に一旦置いて、こちらをじっと見つめてくる。

 二つの瞳が、俺のことを上から下まで、一つも逃さずに捉えんと流れる。

 そして見つめ終えたマヤノトップガンは――頭に手をやって、悩むようなそぶりを見せた。


「でも、キミみたいな人にケーキを食べさせてもらったら、絶対に覚えてるはずなんだけどな」
「……俺みたいな人に?」
「うん。キミは……いろんなことに真面目な人だってマヤは思うから、”この人にレースに出してもらいたいな”って思うはずなんだよ」


 ふと、三年前の記憶がよみがえる。

 ――あのね、マヤをレースに出してほしいの。

 確かに、マヤノトップガンは、出会って一時間も経過していない俺にそう言った。

 その判断基準について聞いたことはなかったが、なるほどどうしてマヤノトップガンらしい、と。俺も納得してしまう。

 でも、だとしたら。彼女のその記憶は……。


「あ〜! もう門限かなり過ぎちゃってる……!」
「……ケーキだったら包むから、残りは持っていくといい」
「いいの……?」
「ああ、元はと言えば君に……なんでもない。とにかく包むからそこで待っててくれ」


 え、ちょ、と。マヤノトップガンが声をあげるのも構わずに、俺は皿を下げて、ケーキを小さい袋に詰め直す。

 先ほどまでマヤノトップガンが使っていたフォークは廃棄して、予備のフォークを入れて、それを突き返す。


「礼はいい。中に入ってるフォークも、使ったら捨ててくれていい」
「……ねぇ、キミはどうして、マヤにここまでしてくれるの?」
「……。ヒトメボレ、かな」


 目を見開いて驚きを露わにするマヤノトップガンの背を押して、トレーナー室から強引に退去させる。

 しばらくトレーナー室の前に立つマヤノトップガンの気配があったが、数分もすれば去っていく。

 本当にこれでよかったのだろうか、もっとやりたいことがあったはずだ。

 なんてことを考えている自分が居て、諫めるように膝を叩いた。

 あのマヤノトップガンは、俺の知るマヤノじゃない。




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