【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」ターボ「3スレ目だ!」【安価】
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142: ◆FaqptSLluw[saga]
2021/09/24(金) 19:59:38.48 ID:On5GL/zV0

 俺の言葉に、理事長は静かにほほ笑んだ。


「――つまり、君のチームで”皇帝”を超えて見せろ。それが私の出した条件だ」


 一週間ほど前の話だ。確かに俺は、一言一句違わない条件を、理事長に出された。

 この時はてっきり、俺たちはルナに勝たなければならない……と考えていたが。


「君たちが勝つとは思えなかった。シンボリルドルフはそれほどに強力なウマ娘であるが故ッ!」
「私も同意見でした。だからこそ、あんな戦術を使う必要があった」
「権謀術数、謀りは決して忌むべきものではないッ! その勝利は紛れもなく君たちのものだッ!」


 話がそれたとばかりに、理事長は一つ「こほん」と咳をして、仕切り直す。


「勝つとは思えなかった故……良い勝負を行えばそれで認めるつもりだったッ!」
「……ですよね。勝負に勝たなければ、ウマ娘をチームに加入させない……とは、私の無理な要望という要素があっても、理事長らしくない」


 ウマ娘を愛する者はこの世界にごまんといる。

 しかし、ことこの日本において、その愛が最も深い存在は誰かと問われれば、間違いなくその名が上がる。

 秋川やよいとは、そのような人物だ。

 だからこそ、ウマ娘の意向に反するような行為は行わない。たとえそれが、不平不満の声に対する対策だったとしても。

 つまり、この勝負は……。


「折衷案、ってことですか」
「うむ! ウマ娘と大衆の感情の平均値、その結果がこの勝負だッ!」


 満足げに扇を広げる理事長に、俺はようやく得心した。


「とはいえ、君たちには少々酷な言葉だったかもしれない……ッ!」
「いえ、最大限考えていただいた結果であることは理解しています。感謝こそすれ、恨むことなんてしませんよ」
「そう言ってもらえると助かるッ! それに、な。実はトレーナーには期待している……ッ」


 期待?
 
 俺が首をかしげると、理事長はちょいちょいと屈むようにジェスチャーした。

 俺が屈むと、周囲を見て……そして、耳にささやいてきた。


「彼女は、今まで何か酷く重いものを抱えているようだった。しかし、君と関わってから……その重さが取り払われたと感じた……ッ」
「……なるほど」


 夏合宿の、あの日。

 確かに俺は、シンボリルドルフが抱えるものの一端を知った。

 それが彼女の抱えるものを軽くしたとは思えないけれど……それでも、その苦難を分かち合うことが出来るようにはなったと思う。


「……だから、感謝しているし、期待しているッ」
「そう、ですか」
「これからも奮励努力するべしッ!」


 そう言うと、理事長は口を離し、屈む俺の頭に手を乗せる。

 そしてわしゃわしゃ、と。俺の頭を撫でた。

 不思議と、温かい気持ちになった。


「君の道は長く辛いものになるッ! だが、忘れるな――」


 きっと俺には成し遂げられない。そう思っていた時期もあった。

 でも、今は違う。こんなにも、俺のことを支えてくれる人がいる。

 だから、今まで俺の抱えていたそれは――。


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